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2019年10月26日 (土)

江戸色町一寸話(ゑどいろまちいつすんばなし)其の七根津月之屋の巻

江戸色町一寸話(ゑどいろまちいつすんばなし)  其の七   㐂三二

 

根津月乃屋の巻

 

大工与五郎襟にお店(たな)の屋号を染め抜いた仕立おろしの藍もあざやかな半被(はつぴ)の裾をひるがえして根津の町人町の路地へ入る。手には折詰を二ツぶらさげ口三味線のごきげん。柿染のすみに小さく月乃屋と染め抜いたのうれん(暖簾)をくゞり格子戸をからからト明けこんばんはと声をかけ上がり框(かまち)の障子を明け「コウお吉ァ空いてるかひ 長火鉢の向うでこよりで喜世留(きせる)のそうじをしてゐた女将「オヤ与五さまおでなさいましお吉ァついさッきお茶ァのみにおりてきて与五さまァ来てくれないかねえッて噂してたとのヨあれはおまさまに首ッたけだよ 与五「よくいふゼその手は桑名よホレみやげだト折詰を一ツおかみにわたし 「ごと(亭)さんと一緒に喰ッてくんねえ 女将「オヤありがた山おみやァなんでございやす 与五「かばやきヨ 女将「マアなんて豪勢な御ご馳走ありがたふございやすサヽ御二階ゑあがつてやつてくださいなお吉がおいでを首ィ見越し入道みてえに長くしとりやすよ 与五「熱いとこつけてくんな 女将「あいよ三本もつけようかネ 与五「そんな呑んだらどろッぺい(酔どれ)にならァな 女将「あいあいオホヽ 与五いきよいよく階段を上がり奥の慣れた部屋の障子を「コウ与五だへえるぜ 吉「あれェ与五さん来てくれたンだァ待つてたンだよゥうれしいねえさあさあ半被をお脱ぎなあれまァ真ッさらな半被だよ手がきれそうなくらひ火熨斗がきいてるねえ 与五「仕立おろしヨ出入りの日本橋の大店(おほだな)のご隠居さまの離れの造作が仕上がつてヨそいでお旦那さまから祝にくだすつたのヨそのうえご隠居さまからはご祝儀をちようだいしてよト腹掛のどんぶりから小袋をひきだす 吉「おやまァおまさんけふは粋だねどんぶりン中にどんぶりいれてんだその布は洒落てるねえなんだい見たことなひよ 与五「さらさ(更紗)ッてンだそふで舶来だぜご隠居さまがこん中にお祝儀いれてくだすつたのヨそいでおめえにもお裾わけつてェわけよ トその更紗の銭入のどんぶりン中からおひねりを吉の手のひらへのせる 吉「まあまあわちきにまでかひうれしいねえ与五さんはァじつ(誠)があるから好きさねえトておひねりをひらきその手を行灯にちかづけ「ヒェッと声をあげる 吉「これはおまさん一朱(銀)ぢやァなひかひこんなにいたゞいていひのかえこんどご隠居さまンとこ往つたらわちきがお礼をもふしていたと伝えておくれなや 与五「あはゝばかやろふ岡場所の馴染がッてのかえそいでよ一緒に喰おうとおもつてかばやきかつてきたンだと折詰をだす 吉「うわッこれはおごちそふこんやァ盆と正月だよねえお銚子あつらえていひかねえ 与五「オウそいつァ一本熱いとこたのんであらあ 吉「あれ一本かひわちきにもおごつておくれよふ 与五「おめえも呑むかそいつァわるかつたいつもはおめえ呑まねえから気がまわンねえで帳場へたのみねえな 吉「アイといそいそと階下ゑたのんでくる 盆に銚子三本と皿をのせてもどりサア与五さんト折詰のかばやきをのせ与五の益子焼のぐい吞みに注ぎじぶんのにも注ぐそしてひといきに呑み干し「あァうれしいねえこふして与五さんとさし向ひ所帯もつたら毎晩こうだねえ 与五「おめえ勝手にきめるねえまだ引取るたァいつてねえゼ 吉「おまさんまた照れていゝンだよあたいはおまさンの胸の内はぜんぶわかつてるンだからサなんもいわなくてもいゝのらい年の春年が明けたら緋の襦袢ぬいで白木綿の腰巻に替えて嫁に往くからねそふおもつたゞで月のもンがとまッちまひそうだよふ 与五「とまッたンか 吉「そんなドジはしなひやねえわちきは玄人だよはらんだりしたら女良(じよろう)の恥お馴染さんにもお帳場のおかあさんにも申しわけがたゝないやねえいつもちやんとよく噛んだ紙ィつめとりやす与呉さんとこいつたらもふそんなことしないでいゝンだはれて素人になれるンだ 与五「おらァ悪酔ひすらァ 吉「おまさンやだねえまだ一本残つてンのにもふどろッぺき(泥酔したさま)だよ

 

 

挿絵   歌麿筆

扇子の本歌取り狂歌

蛤に 者(は)しを志(し)つ可(か)と 者さ萬(ま)れて 鴫たち可ねる 秋の夕くれ

 

本歌 西行山家集

心なき 身にもあはれは しられけり 鴫たつ沢の 秋の夕暮

 

2019年10月24日 (木)

創作小唄

🔴創作小唄

 

  『とんがらし』       作㐂三二

〽︎とんがらしィ

とんとん とんがらし

なぜに おまえは 浮気する

あたしゃ  悋気で  とんがらし

(つの) 真ッ赤にとんがらし

とんとん とんがらし

とんとん とんがらしィ

 

 

  『カラス』       作㐂三二

〽︎からす カァで バカかいな

屋根で 待ってる バカかいな

裏から 下女が 団子 投げ

いま 旦那が 帰ったヨ

からす すかさず 舞い降りて

裏から  スルリと

真ッ黒毛の真ッ黒毛の 濡羽色

あァ からす カァで バカかいな

バカかいな

 

 

『恋の下駄』

〽︎下駄をネ

カラリと蹴ってあしたァ天気

も一度蹴ってあさってァ雨ヨ

雨に来る人  誠(じつ)の人

日和下駄で来る人、誠の人

わたしャ主さん散茶だよ

茶筅で振ったりいたしやせん

お迎え来るまで

差しつ差されつ  本の仲ァ

雨の降る夜(よ)は

誠の仲ァ

 

 

『長命寺』

〽︎わたしゃおまえと長命寺

桜のしとねにくるまれて

おまえ百までわしゃ九十九まで

桜もちにはなれぬとも

せめてなりたや長命寺

 

 

『待乳山』

〽︎誰を待つやら待乳山

誰哉(たそや)行灯ぼんやりと

人に見せたや知られちゃならぬ

恋のうれしさ切なさよ

蛇の目にかくれて物かげで

誰にもゆうてくれるな都鳥

 

 

『言問だんご』

〽︎浮気な業平朝臣(あそん)が云ったとサ

言問団子は占い団子

黄色のくちなし団子からお食べの人は

内緒のお人がいるお方

さらし餡からお食べの方は

好いて好かれたみょうと仲

白い団子からお食べの人は

じつの情けの深い人

好いて惚れるなら

こんなお人に惚れしゃんセ

 

 

『面影橋』

〽︎四谷新宿しおらしや

おまえと別れた面影橋の

この手に残るあたたかみ

あれから数えてもう三年(みとせ)

赤子をその手に抱いてるか

便りの風も吹て来ぬ

 

 

『松の月』

〽︎月に松とは   (〽︎松に月とは)

やるせない

来るか来ぬか

分からぬ人を

わたしゃ今宵も

待つに尽き(月)

 

 

 

『墨堤』   

〽︎向こう堤は向島

あれを行くのはあの人かひな

あたしや三社で手古を舞ふ

あゝしょんないなしょんないな

 

向こう堤は向島

ゆらりゆらりと屋根舟から

糸の音 川面づたいに胸騒ぎ

あゝしょんないなしょんないな

 

向こう堤は向島

さくら  葉桜墨堤通り

ふたつの影が見えたり隠れたり

あゝしょんないなしょんないな

 

 

 

『小梅(こむめ)村』

〽︎日ッ本橋の、日ッ本橋のお旦那が、

向こう向島は小梅(こむめ)村

お別宅お建てになりました

黒板塀に見越しの松で

石灯籠に庭石おいて

築山つくって池掘って

小女(こをんな)おいて

準備万端おそろいで

後はお妾さがすだけ      

どこかにお妾出物はないか

ないかいな

 

 

『馬道(まみち)』   

〽︎馬道(まみち)往くのは

兄サじやないか

三枚肩の駕籠飛ばし

お引けに合わせて飛んでゆく

あァ妬けるヨこの胸が

雨もしとしと降って来た

帰りはぬかるヨ浅草田んぼ

滑って転ばにやいゝが

兄サ、気をもむあたいが

こゝにゐるのに気づいておくれ

えェ、気づいておくれ

 

 

 

『首尾の松』

〽︎今日はもてるか

袖振られるか

猪牙(ちょき)の櫓の音

占いギッチョンチョン

表が出るか裏目が出るか

川風ほつれの鬢をなで

気がきでないぞよ

首尾の松

 

 

『吉原冷やかし』

〽︎反古紙(ほごがみ)冷やかして

鳥渡(ちよいと)いこうか吉原大門(おおもん)

仲ノ町(ちょう)総籬(そうまがき)

見るだけ大尽大馴染

朱羅宇(しゅらう)の雨をかいくぐり

水道尻(すいどじり)にぶち当たり

黒助稲荷鳥渡(ちよいと)天窓(あたま)下げ

羅生門河岸で

大事な利腕もがれそう

えェ放しなおいら冷やかし

金棒引きに追い払われて

さても昼の法楽(ほうらく)目の保養

帰って紙洗橋で

紙すき仕事 ひと仕事

 

 

『長命寺』

〽︎わたしゃおまえと長命寺

桜のしとねにくるまれて

おまえ百までわしゃ九十九まで

桜もちにはなれぬとも

せめてなりたや長命寺

 

 

『待乳山』

〽︎誰を待つやら待乳山(まつちやま)

誰哉(たそや)行灯ぼんやりと

人に見せたや知られちゃならぬ

恋のうれしさ切なさよ

蛇の目にかくれて物かげで

誰にもゆうてくれるな都鳥

 

 

『言問だんご』

〽︎浮気な業平朝臣(あそん)が云ったとサ

言問団子は占い団子

黄色のくちなし団子からお食べの人は

内緒のお人がいるお方

さらし餡からお食べの方は

好いて好かれたみょうと仲

白い団子からお食べの人は

じつの情けの深い人

好いて惚れるなら

こんなお人に惚れしゃんセ

 

 

『墨堤』

〽︎向こう堤は向島

あれを行くのはあの人かひな

あたしや三社で手古を舞ふ

あゝしょんないなしょんないな

 

向こう堤は向島

ゆらりゆらりと屋根舟から

糸の音 川面づたいに胸騒ぎ

あゝしょんないなしょんないな

 

向こう堤は向島

さくら  葉桜墨堤通り

ふたつの影が見えたり隠れたり

あゝしょんないなしょんないな

 

 

『恋の下駄』

〽︎下駄をネ

カラリと蹴ってあしたァ天気

も一度蹴ってあさってァ雨ヨ

雨に来る人  誠(じつ)の人

日和下駄で来る人、誠の人

わたしャ主さん散茶だよ

茶筅で振ったりいたしやせん

お迎え来るまで

差しつ差されつ  本の仲ァ

雨の降る夜(よ)は

誠の仲ァ

 

 

『面影橋』

〽︎四谷新宿しおらしや

おまえと別れた面影橋の

この手に残るあたたかみ

あれから数えてもう三年(みとせ)

赤子をその手に抱いてるか

便りの風も吹て来ぬ

 

 

『松の月』

〽︎月に松とは

やるせない

来るか来ぬか

分からぬ人を

わたしゃ今宵も

待つに尽き

 

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