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2018年5月 6日 (日)

江戸色町一寸話(ゑどいろまちいつすんばなし)  其の三  㐂三二

江戸色町一寸話(ゑどいろまちいつすんばなし)  其の三  㐂三二

 

京橋白魚屋敷を通りこし柿渋染の暖簾(のうれん)から首ィつッこンだ日本橋本町裏の葛籠(つづら)職人吉三「空いてるかひ 女将「吉三さんおいでなさいやしおたえが首ィ見越し入道で待つてるヨ 女良(じよろう)たえ「あらァ吉ッつあん待つてたのよォ 吉「よくいふゼおたえおめえハこのめえは振りやがつたくせに た「しようがないンだようすぐ吉ッつあんの床ィひっかえしたらもふおまさん帰ッちまつたあとでサほんにおまさんハ短気なんだからどうしていゝ男はこうも気が短ひのかねえわつちはつらひわト袖で目元をぬぐふ 吉「おたえ泣くねえこうして来たぢやァねへかト云ひふところから手拭につゝんだ朱塗の櫛をだしたえゑさしだす た「アレッくれるンかひありがたふうれしいねえほんにおまさんはやしいねえ 吉「へ、上げたり下げたり忙しいやおめえハ文(ふみ)ィくれたがおめえハ達者な文ィ書くねえ た「よんでおくれかひ吉ッつあんに会いたくてさあこつちからァいけない身だからねつらいンだよ待つ身ハこないだァ怒つてかえつちまつたからもふ来てくンないンぢやないかと思ふと切なくて切なくてトまた泪をぬぐふ 吉「もふ泣くねえこふして来たぢやァねへかそれにしてもおめえいゝ字ィ書くぢやねえかどこで習つたンでェ手習指南所か た「わつちの身でそんな立派なとこにやァいけなひヨ吉ッつあんこそ手習指南所だらふ た「わッちや佐野の在ヨ江戸の町ッ子ぢやねへから町にあるやふな手習指南所は村にやねへンで寺の和尚さまンとこで読み書きおせえてもらつてナ親父がいかしてくれてヨおめえは次男で田ァ分けてやれねえだから江戸ゑ出て一人で生きていかにやァなんねえ読み書きはおめえにさずける田畑だとおもつてひつしに学ばァなんねえッてわけヨおなごでいやァ嫁入り道具とおンなじサこれやッからけえッてくんなッてことヨ た「つらいねえ 吉「仕方ァねえゼ次男に生まれたンが身の不運ッてえかこうして江戸で職人になつてみりやァ在で親父の田ンぼついで土まみれになつてんが仕合せがゝか江戸でこざっぱりしたもん着ておめえンとこに通える身が仕合せかそこんとァわかんねえゼ た「うれしいねえ吉ッつあんそふおもつてくれるンかひやつぱりあつちの吉ッつあんだヨ 吉「このやらふ調子がいひゼそうそうおたみ一本つけてくんねえナ た「あいよト階下の帳場へ行く やがて徳利がとゞく た「サ,吉ッつあんおあがりよト盃をすゝめる 吉「おッ注いでくんねえト一杯ほして盃をたえゑさしだし注いでやる た「あァおいしいやつぱり好きなお人と呑むンは味がちがふねえ吉ッつあんはあたいのゑびすさまだよ。吉「なんでえそりやァ た「福の神ッてえことだよ 障子の外から女将の声「おたえさん鳥渡(ちよいと)た「アイなト部屋外へ 残された吉三「けッ、なンでえ、今夜も清元の喜撰かよ。世辞でまろめて浮気でこねてか。馬鹿にしやがつてト床へ寝転がる。石町の時の鐘ぼォォン。

 

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