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2013年10月20日 (日)

菊宵後見十三夜(きくづきよあとみのじゆうさんや)

 こふちかごろのやふに暑ひ暑ひが長くつゞきやすと、九月にへえるとうれしゆうございやすナ。さすがのお天道様もへこたれてすごしやすくなりやすもンねえ。月の呼名ァ数々ございやして今月ァ長月のほかにやァ菊月玄月剥月戊(ぼ)月貫月とも言ひ、秋の最後の月でやすンで暮秋晩秋末秋盛秋残秋菊秋などとも称したよふでやすナ。デいまじぶんになると空気も澄んで月がいつそう美しい。トなると十三夜の月見でございやすナ。月見と言えば八月十五夜仲秋の名月だらふと息まくお方ァ吉原ぢやァおもてになりやせんヨ。その十五夜の月と九月の十三夜の月は対になつておりやして、花魁衆はたいへんでございやして。十五夜に登楼(あが)つてくれた馴染にやァなんとしても十三夜の約束を取り付けなきやァならねえ。ところがどちらも吉原ぢやァ紋日になつてンで諸事高直(こうじき)になりえらひ物入りになる。賢い客は難をおそれて八月九月は大門をくゞらねえのもゐたッてえからこふなると遊びぢやァありやせんヨ。しみッたれが十露盤(そろばん)はじいてン不通(やぼ)ッてやつですな。八月十五夜の客は得たが十三夜にや花魁がふられたなンぞになると内所(ちようば)にも朋輩にも顔向けができねえ。一人でさびしく片見月となッちまふわけでして。十露盤高いやつになると明けて十四に登楼するなンてせこいのがゐたそうで。こんなやつァ江戸ッ子の風上にやァおけやせん。大店の息子株なんかゞ馴染の花魁に華ァもたせてやらふッてんで八月の十五夜と今月の十三夜を引き受ける。ふだんでも昼三の花魁を呼出だと一晩に十両はかゝつたといいやすし、平の昼三でも五両はかたいそふでしたから、それが紋日ともなるといくらかゝるか十露盤がたちやせん。なんせ十五夜と十三夜をはずんだ倅が親類一同の集まりで勘当になり銚子の網元におあずけになつたなんてのはよく聞く話でございやすヨ。咄ァ跡()先になりやすが昼三ッてのは花魁のお値打でして。昼の揚代が三分。四分で一両でやすから四分の三。とは言えこりやァ花魁そのもだけので幇間を一人芸者はかならず二人ひと組、喜の字屋ッてえとこから刺身なんかを鳥渡(ちよいと)のせ花や松で飾りたてた台の物なんてのも取寄せにやァならねえし遣手(やりて)の婆さんにもくばらなきやァなりやせん。呼出ッてのは映画なんかで見る花魁道中で、上の衣装を仕掛と呼びやして二枚を重ねて着ておりやして髪には一例でやすが鼈甲の前ざし八本後ざし八本、下駄は表つき黒漆の三枚歯、若ひ衆の肩に片手をかけてそろりそろりと外八方で歩み、お供に禿二人に振袖新造番頭新造から遣手傘持ちの若ひ衆でけえ箱提灯さげた若ひ衆などをしたがえて客の待つ茶屋の前の床几へ出迎えにくるッてンですから。そりやァ豪勢なもの。腕の能(いゝ)大工はひと月に一両ぐれえ稼いだッてことなンでそッから推量すりやァ一晩にいまのお金にして五百万円ぐれえはかゝつたそふでやすからそりやァ勘当にもなりやすナ。
(初出:カランドリエ平成二十五年旧暦九月十三夜号)

2013年10月 8日 (火)

川柳手習所見習(せんりゆうきようしつにゆうもん) 水無月席ノ巻

 水無月と申しやしても新暦のことでございやすから6月9日、葛西衆の里の席で十一句ほど詠みやしたが白状しねえとお叱りをうけやす。あつしァ歩けなくなつておりやすンで肝入りさんへ電飛脚で送つて席へ出していたゞきやして。三月からずつとこんなあんべえでご迷惑のかけどうしヨ。

 

 さて、はなのお題は、急ぐ

 

   つばくろは旅のさなかに子をなせり

 

   あつ湯好きそッと入ってさッと出る

 

   蕎麦ッ喰い仇のように手繰りこみ

 

 次のお題は、べたべた

 

   耳そうじ古亭主との膝まくら

 

   目明しの平次目がない恋にょうぼ

 

   地廻りのとらのご帰還泥の足

 

 三ツ目のお題は、がっかり

 

   粋な三味覗けば師匠ばあさまサ

 

   業腹ヨ深川飯が旅浅蜊

 

   落し文踏ンづけられてむごいこと

 

最後は二句でお題は、五重の塔

 

   六三四塔五重塔をかすませる

 

   音に聞く塔は上野か浅草か

 

 トまァこんなあんべえでございやしたが、選にへえつたンは下の三句でして。
   客   目明しの平次目がない恋にょうぼ
   客   粋な三味覗けば師匠ばあさまサ
   秀   六三四塔五重塔をかすませる
 ヘイお粗末さまでございやす。こんげつハこれきり。

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