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2011年1月26日 (水)

牡蠣胡椒煎【江戸料理】

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お江戸で貝ッてえば蛤浅蜊しじみが相場、磯のあわびは片想ひさゞえは悋気で角ばかり、舌だし馬鹿貝青柳ッてとこが馴染みで牡蠣ッてのハあんまり聞かねへ。そいでも江戸めえの海にときによつちやァ牡蠣の洲ができるし、日本橋牡蠣殻町なんて町もあるくれえだからまんざら無縁ぢやァねへンだらふが、あつしの餓鬼じぶん包丁もつてくれてたばあ(祖母)さんやおッかさんがつくる飯に牡蠣なんぞおでましになつたこたァいつぺんもねへ。いつぺんもねえのに貝らしくねへ定まンねへ形だと知つてるのが奇妙な咄だが、あの不確かな姿形があやしくて手ェだす気にやァなりやせんでしたし、鯖ぢやァねへが生き腐りみてえでおぞましいお姿なんですつきり真ッつぐが好きな江戸ッ子ァお見限りト思つておりやしたら、福田浩旦那と松下幸子師匠がお書きなすつた江戸の肴惣菜百品料理いろは包丁ッて今出来の柴田書店の指南書に牡蠣胡椒煎ッてのが載つておりやすのヨ。こいつァしめ子のうさぎ。さつそく試したッてェわけヨ。こいつァかんたん夕飯の菜だッてのに朝飯めえッてやつサ。剥身の牡蠣買つて来やしよう。そいつを立塩の水で二へんよく洗ひやす。牡蠣ッてのはなんだネ。けつこう身をよごしておりやすナ。身ぎれいな蛤たァ大違ひ。水の汚れやふ見ると喰う気がひけるヨ。鍋に酒五の醤油一ィいれて沸かしやす。江戸で醤油ッてへば戀口、おット字ィ間違へた濃口だ。この醤油ァ江戸のほまれヨ。上方の薄口みてへななまッちろいンたァ出来がちがうンだ。坂東の勇みの色ヨ。おぼえておきァがれッてのサ。こいつ煮たてといてそこへ牡蠣の野郎ぶちこンで煎りつけるッて算段ヨ。マ言つてみりやァしぐれ煮みてえなもんだナ。酒つたぷりに濃口おごつてるから金気くせへ牡蠣の臭みが消えやすナ。だめ押しに山椒の実の挽き立てをふりかけて出来上がりッて趣向サ。これを喰つてみて合点したネ。お江戸の衆は牡蠣臭さァやつぱりおきらいだつたとネ。あの嫌味が消えて旨味ばかりが立つてきやいたゼ。いゝ晩飯でござんしたヨ。附(つけたり)に申しあげりやァ飯は生姜飯、おみおつけは大根の千切。言ふこタねへヤ。

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