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2010年8月27日 (金)

巻の七 都々逸手前美素(どゞいつてまえみそ)

 暦ぢやァとつくに秋だといふに左平治ぢやァあるめえものをいつまで居残りする気だか今年の夏ァ魂胆がしれやせんヨ。お気楽な都々逸で暑気払いと洒落やしよう。

喜世留(きせる)くゆらす姿を見れば のん気に見えて金算段

みんなもてたか見返り柳 しつぽり濡れてる朝の露

暑いさなかに日傘をさして みんな美人に見えまする

往くか深川それとも堀か 船頭(せんど)まかせの夏の宵

業平しじみ深川あさり 蛤ァ南板がしら

粋な川かぜ屋根舟ゆらし 思はず手をつく主の膝

屋根舟うかべなじみ芸者の 三味の音きゝたや暑ひけふ

待ってた秋風ふいたはよいが 舟がゆれては主は来ず

秋はそこまで来てはゐるけど 主と妾(あたし)にあきはない

本所一ツ目弁天前の、猫茶屋遊びで空ッ毛ツ
    ※(毛ツ=尻。けつの毛まで抜かれるにかけた。毛は相手が猫女郎だから)
  ※猫茶屋=こう呼ばれていた岡場所があった。

蝉の鳴き声暑ふはあるが、たつた七日の命ぢやもの

せめてひと吹き秋風さんよ、花のお江戸はしおれそう

旦那涼し気絽の夏羽織、妾(あたし)ァ思はず呂の字の無心
  ※呂の字=口を二つ重ねるの意。江戸語。

ひャッこいひャッこいひャッこいナ、水の売り声夏の風
  ※夏の江戸では甘みをつけた水を売り歩いていたようですナ。

ことしの夏は野夫(やぼ)なやつだよ、秋になつたに居残りサ

屋根舟で涼む身分ぢやありやせんが、せめてなりたや土手やなぎ

三味はむりだがせめて聴きたや、秋の虫の音涼やかに

堀におくつたかえりの船で、独りつまびく音(ね)がわびし

けふも咲いたよ吉原じまん、似多山さまのうぬ桜
  ※似多山=似て非なるもの。半可通の意。
   うぬ桜=うぬぼれ。 共に江戸語。

深川岡場所ひと汗かけば、堀の風呂船でいいをとこ(男)

世辞でまるめて浮気でこねて、まわしでじらしまたおいで
    ※上七七は喜撰の文句

涼みがてらに柳原土手、おはなおちよの怖(こわ)夜発(よたか)

九尺二間の独り寝ぐらし、隣り師匠の三味が艶

はなの下谷は長ひでりとて、くたびれ足の板橋サ

吝(けち)はこわいよ爪にともした、火が元火で野暮の火事

女のぐちが新内ならば、都々逸ァ女の胸のうち

あついは主と妾(あたし)の仲と、天狗でゐたが夏にャ負け

そつと爪びく三味でひと節、船宿二階の忍び宵

首尾はいかがと松が問えども、けふも答はできやせぬ

折込  絵日記

 え 絵師に描かしょう

 に 錦の絵にも

 つ 尽きせぬ色香

 き 肌理の肌

2010年8月24日 (火)

秋宵蜩衣漢(あきのよいあかしちぢみのをとこだて)

Photo

08210001

「08210003.jpg」をダウンロード

 蜩(ひぐらし)の羽のかるさよ明石縮ッて殺し文句にころりとまいり、勝虫(かちむし)印傳合切袋のけつゥひっくりけえして叩いてだした虎の子の十と六両。生まれついての暑がり坊主三ツ子のたましい百まではまだ三十の余もあるが、此の歳になつても暑さァあつしの天敵、麻の長襦袢に越後上布小千谷ちぢみでしのいできた永の歳月、夏と秋とのあわいの陽気にその殺し文句を涼しげに着せてもらおうかとの算段。なんせ危篤大病二度三度四遍までかずえた死にぞこないもう世間も鎌○ぬ(かまわぬ)の大年寄り。御免蒙とめこぼしねがつてしつけ糸ひき抜きはおりやァ色は鳥の子に鼠(ねず)の大名縞だか目ェ寄せてみりやァ縞に小波を打たせた立湧縞。あわせる帯は細身仕立ての銀鼠。その腰にやァいつもの白地に黒の釘貫柄印傳誂え小箱を杖突ぢぢい写し身彫の根付でぶらさげ、左の脇にやァ黄楊の喜世留(きせる)筒にお馴染漆絵蟹づくしの革多葉粉入れ並べて扇子さし、麻の白足袋鼠の鼻緒の桐正隅切りなしの細身の馬木履(こまげた)でからりからりと花の銀座は三丁目の一本裏手、けふの昼のねらいはきだの手打ち。カツレツて評判とつてる煉瓦亭の並び。小体も小体、小々体(しょうこてい)の店(たな)だ。ごめんよとへえりやァすつと涼しい仕掛けの風。日照りつづきの温気に蒸された体にやァありがた山ヨ。誂えは言ふまでもなく冷やしすだちのぶつかけ蕎麦が狙い。残暑ものともせずにでてきたのはこれがゞためヨ。芳ばしい蕎麦茶でのどをしめらしまてばヘイお待ちトほどよい丼が目のめえに。これよこれこれ。冷やしたつゆ張つた丼の蕎麦をかくすほどに覆つたすだちの薄輪切り。いゝ香りぢやァござんせんかい。これが喰いたくて暑さをものともせずに明石縮で出ばつたッてわけヨ。塗りの木杓子でつゆを一口二口。ひんやり冷たいその中にかつを(鰹)の出汁のうまみがきいてゝなんとも言へやせんゼ。輪切りのすだちァ明石縮の向ふはつて蜩の羽のやふに透き通つていやがるから、板さんの包丁と腕がわかろうッてもんヨ。蕎麦たぐりやァ丁度いゝあんばいの腰のありやう。こいつァ夏の蕎麦だねえ。そろそろ夏も尾張町ヨ。どうしてもつとはやく何遍もこなかつたかねえ。くやまれるゼ。ごッそうさんと勘定払つて銀座通り。鳩居堂で防虫香、くのやで麻絽の半襟二めえ。足ィのばしたとらやの二階へはいあがつて暑気払いの宇治茶のかき氷しらたま三ケ散らして喰えば通りをからりからりと歩いてかいた汗もどこえやら。やつぱりとらやヨ。かき氷も伊達ぢやァねえや。和三盆の甘みァいやみがござんせんなァ。菊水で喜世留素見(すけん)しぶらぶらもどりやァ暑いたァいえ秋の日ァはすつかいになり夕の時分どき。模型屋うらの鰻屋へ飛び込んでうざくで麦酒。きりきりに冷やした麦酒が喉ォかけくだる爽快なんぞ生きてゝよかつたッてやつヨ。〆はうな丼。兄さん飯は少なめにしツくんナ。

2010年8月 4日 (水)

巻の六 都々逸手前美素(どゞいつてまえみそ)

 お暑うございやすナ。そいでも暑い暑いッてぼやいてゐても涼しくなるものでハなし。都々逸でもつくって気散じッてのが安上がりのお遊びでよござんしよう。

惚れたの声をたよりの棹に うき川竹の身をやつす 
  ※うき川竹=浮き川竹。明日はどこの岸につくかもしれぬ岡場所女郎の身。深川の掘割など汐の干満で竹が浮子のように漂うさま。
  ※棹と川、浮きと川、は縁語。

北へ往こふか南にしよか 気ッ風深川宵遊び

旦那涼しい顔してゐなさるが 火宅の内を言はぬ花

人を茶筅と思ふてゐるか 往くたび茶にし振りくさる

価千金一粒千両 親父にャ言へぬ甘露梅

汐の満ち引き川竹ぐらし 主のひと言もやい綱

北は格式南は漁師 西は馬士(まご)さん何処いこか

明けの烏がせかしちやゐるが 勘定すまにやかえしやせぬ

やらずの雨もふりこめられりャ 出るにでられぬ籠の鳥

雨で居つづけ銚子のさんま 匂ひが風にのつてくる

妬いてゐるのか雨サン止んで 相合傘の仲をさく

肩は濡れるが相合傘は 小振り仕立が妾(あたしァ)好き

雷(らい)に恐いと主にかじりつきャ とうにふるえてござつたサ

肌にひんやり主とふたりで 昼のうたたね蒲(がま)むしろ

さッとひと吹き通り雨さんハ いな背哥(あにィ)の伊達走り

添ふも添へぬもふたりの縁ヨ 無理でおしても花さかず

未練もつなと聞いてはゐるが ほんの恋なら消えやせぬ

暑さきらいな主さんのため 団扇打ち水来やしない

とんぼすいット飛んでどこ往く 妾(あたし)ァ往けずに待つばかり

とんぼ勝虫むこう見ずだよ 引くを知らずに押すばかり

あんないい人見たことないト 醒めて思えばただの人

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