無料ブログはココログ

« 2010年5月 | トップページ | 2010年7月 »

2010年6月26日 (土)

巻二 都々逸手前美素(どゞいつてまえみそ)

 どういう風の吹きまわしか、ちか比(ごろ)洒落修業で都々逸ごつこ。下手の横好きお付き合い。どうぞよろしゆう。

    

    妾(あたしァ)あじさひ主さん雨よ 濡れるたンびに色が増す

   雪駄が駒にきつい悋気よ 羽織の素足うらやまし
      【附(つけたり)】羽織=深川芸者の異称。

   あやめ咲いたか花火はまだか 主とふたりの舟遊山(ふなゆさん)

   ふたりで忍ぶ不忍池 茶屋の障子に蓮の影
 

   けふの青空行水日和 戸板めぐらし見ちゃいやよ

      暑い夏とてふたつの枕 ならべて朝の露に濡れ
      

      ながい湯だねと待ちかね山(やま)よ 洗ひ髪にし薄化粧
 

    苦労は買ってもしろとは聞くが 買った花魁(をんな)にこの苦労    

 
   猪牙(ちょき)に乗る人じゃんけんならば げんこに負けて文(ふみ)に勝つ

      湯屋で自慢の猪牙(ちょき)だこ見せて なンのやつのは居職(ゐじょく)だこ

   コウ船頭(せんど)さん堀ィぐいだよ ヘイ若だんなお繁りで
     【附(つけたり)】
     コウ=呼びかけの語。江戸語。現代のオイにあたる。
     堀=山谷掘。通称堀。隅田川に注ぎ込む山谷堀。新吉原へ往くには此処に舟(猪牙)を着ける遊客が多かった。
     ぐい=急ぎの意。ぐい呑み。蕎麦ァぐい造りでやっとくれなど。
     お繁り=お繁りなさいやし、の後略。吉原詞。男女の交合を盛んにおこなう、の意。

 五七七七五の形で。

   素麺が 江戸ひやむぎに からんでみたが 色のひと筋 ないが負け

    鐘が鳴りいした 好かぬ客なら いゝ鐘だけど 好いたお方にャ つらい鐘   
 

喜撰の文句を鳥渡(ちよいと)借りて。

   世辞でまるめて浮気でこねて むきになつたが客の負け

お仲間の前半をから鳥渡拝借いたしやして。

   梅雨の合間のお天道様が そつと覗き見行水すがた

折込に打ち込みのお仲間のお題をお借りして。

梅雨入りを折込で。

   つ 爪弾く三味も 
   ゆ 許しちやァやれぬ
   い いゝ男(しと)奪(と)つた
   り 隣家のをんな(女)

入梅を折込で。

   にゅ 兄さんどこへ
   う  うつかり聞かれ 
   ば  売女(ばいた)買いにと
   い  言へやせぬ

   にゅ 兄さん鳥渡(ちよいと)
   う  初(うぶ)な(青)二才の 
   ば  はにかむ頬が
   い  いとしいね

季節のお題で。

   わ わずかな酒で
   か からむはおよし
   あ あたしァこれから
   ゆ 湯ゥ往くの


【番外】 平成車屋手代の首切り 八億余両の大鐘ゴーン

2010年6月20日 (日)

都々逸手前美素(どどいつてまえみそ)

  此処ンとこ足ィ痛めて閉じこもつてるンで、都々逸ひねつてあすんで(遊ンで)おりやして。曲(きょく)がねへかもござんせんが、ヘぼの横好き。ま鳥渡(ちよいと)お付き合いしておくんなせえ。

    逢いたいお方姿を見せず 呼ばない梅雨がすぐそこに

    妾(あたしァ)紫陽花(あじさい)主(ぬし)さん大地 色のまかせは主しだい

    いとし殿御としつぽり濡れる そんなつもりが梅雨で濡れ

    梅雨の晴れ間はうれしいすき間 亭主ゐね間の間夫のやふ

    恋に落ちりやァ川竹(かわたけ)ごころ うわさの波に右ひだり

    今宵くるかと湯を立て待てば またも独りの広い桶

    おてんとさんは不通(やぼ)なもんだよ やらずの雨の気もきかず

    やらずの雨に障子を立てゝ 誰が濡らしょ釣りしのぶ

    雷(かみなり)さんは粋なもんだよ 主と妾(あたし)の結び神

    雷(らい)をきつかけ障子を立てゝ 聞くだけ野夫(やぼ)な三味の絶え

    独り呑む酒春なら霞 やがてもうろうのたり寝る

    雷(かみなり)さまは寸法しらず 三寸下は臍ちがい

    行水をして髪あろて 今宵は主とさし向ひ

    蚊は憎いけどおかげでうれし 主(ぬし)とふたりの蚊帳の中

    なんでこんなに別嬪ぞろい 目移りさせる罪をんな(女)

    竿を干す間もない能(いゝ)をとこ(男) 濡れるはずだよ船頭(せんど)さん

 梅雨ともなるとそろそろ蛙がでてきますな。痩せ蛙負けるな一茶こゝにありの句の本意はじつはこんなとこぢやァござんせんかねェ。

    一茶師匠はお好きなお方 ひと夜に五交痩せ蛙

    庭に打ち水蚊やりをたいて いとしいお方を吊り忍

    星の数ほどをんな(女)はあれど とト口説かれたが運の尽き(月)

 趣向をかえて、五七七七五の形で一ツ。

    素麺が江戸ひやむぎにからんでみたが 色のひと筋ないが負け

 お題をいただいて折込で。

    お 大川端に
    き 来てみて待つが
    が がっかりふられ
    さ サノヨイヨイ

    お 白粉ぬって
    き 着物を替えて
    が 帰しともない
    さ 小夜しぐれ

    お 男衆(をとこし)は
    き きれいがお好き
    が 可愛いあたしャ
    さ さあどつち

    パ 派手に鳴るから
    ラ 雷(らい)が狙うゼ
    ソ そっと哥(あにィ)が
    ル 留守狙い

    パ はらり鬢(びん)の毛
    ラ 楽寝(らくね)のをとこ(男)
    ソ そりャ嬶(かゝ)さん
    ル 留守かいな

    パ ハイヨと転ぶ
    ラ 羅生門河岸
    ソ そりャあんまりだ
    ル 流通(るつう)すぎ

【附(つけたり)】
※羅生門河岸=吉原の最下層の女郎屋が並ぶ処。
※流通(るつう)=江戸語。なんでも知っている、などの意。

2010年6月12日 (土)

上々大吉夏幕明(とんとんびょうしなつのまくあき)

 もうだいぶ日がたつちまつたんだが、卯月(四月)二日、衣更の翌ンち、きのふから夏ッて二日目ヨ。耶蘇教の暦で言う5月15ンちダ。朝ッから滅法界天気がいゝンでこねえだ書いた江戸蕎麦たぐりにぶくろ(池袋)の百貨店の惣菜売場へでかけやしてさつそく誂えやしたヨ。蕎麦ァまァなんだぜ結構ふつうにあるもんと思ひねえ。肝腎なのはつゆヨ。これがふたいろ(二色)でてくるんだ。並の醤油味のと売りの味噌味。このつゆヨ。こいつでざるを手繰りたくッてわざわざ来たつてことヨ。蕎麦ちょこの中ァのぞきやァどつちもちよつぴり。これがいゝンだゼ。だつぷりへえッてりやァ蕎麦がおぼれらァ。薬味皿にやァ大根おろしわさびおろし葱はふたいろ根深と葉葱の刻みほかに蕎麦の実少々。その蕎麦の実ィつゆに入れて召し上がつてみておくんなさいト若旦那風の板さん。人のすすめにやァのつてみろッてのがあつしの身上。それではずれりやァ二度とこなきやァいゝッてネ。味噌味のつゆはめえに銀座三河屋のとこで書いた煮抜き汁だね。江戸が野田で醤油ができるようになるまでハかつを(鰹)出汁に味噌を溶いたこのつゆで江戸ッ子ァ蕎麦ァ手繰ってゐたッてェ復刻蕎麦だゼ。この旨さァそつくりおなじぢやァねえが信州高遠の町ぢやァ名物にしておりやして、一辺喰って跡(後)ォ惹いてどうにもなンなかった風味のあるつゆヨ。此処でまたお目文字できるたァ果報だゼ。おすすめ通り蕎麦の実ぱらりとまいた味噌味のつゆンなかに箸でつまみあげた蕎麦の尻ィ鳥渡(ちよいと)着けズズズッと手繰つて二口三口かめば歯の間でぷちぷちと弾ける蕎麦の実の歯ごたえのよさ。江戸の連中は旨いもん食つてたンだねえ。百貨店の中ァ風情がねえンでこいだけのもん喰わせる見世なら本店で落ち着いて喰いてへのが人情。どこだいト聞きやァなんと向島の料亭すみ多ときましたヨ。こいつァまいつたネ。いくら旨いからッても料亭ぢやァどゞッとなだれこんでざるゥいちめえぐいずくりで茹でゝくんなッて頼んだら八百善の茶漬ヨ。法外な高直(こうじき)だゼ。ご馳になつたゼまた來らァと演芸場。中へゝえると丁度幕が開くとこ。なんて間がいゝンでしようッてやつヨ。番組表をみてまたまたついてるネ。贔屓の正蔵が仲入りめえ、その跡(後)がまたまた贔屓の橘屋文左衛門だゼ。正蔵と文左の咄、一緒に聴けるなんて上々大吉ヨ。ふだんの行いがいゝからねえ、あつしァ。正蔵は鼓ケ滝。でうぶ板についてきたね。真打のでだしンときァ照れてる感じが初々しくてあれはあれでよかつたネ。文左の咄ァなくて七癖ッて題かな。あいかわらず意気がいゝや。はねて出りやァ日は傾いて時分どき。ちょい先の鰻屋う奈鐡でぬる燗一本を青柳のぬた和えでゆつくりたのしんでから、これまた時季のそら豆のあつ\/。〆は蒲焼。此処ンちハ宵から呑屋みてえになッちまうンだが蒲焼は絶品。焦目ひとつつけずにふんわりと焼き上げる名人芸ヨ。巷だからッてあなどれねへもんヨ。腕のいゝ職人さんがゐなさるンだねえ。ま、こんなわけでこの日ァいちンちとんとん拍子の上々大吉ッて果報サ。

« 2010年5月 | トップページ | 2010年7月 »

最近のトラックバック

2017年1月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31