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2009年10月31日 (土)

華六病息災(はなのおゑどのやまひだれ)

A  京の着倒れ大坂の食倒れ江戸の履倒れなんて言ひやすが、けふの咄ァ病だれだよ。
 あっしやァ物持ちがいゝンで、懐電話もゝふなんねんになるか。鳥渡(ちょいと)思い出せねへくらいながく使っておりやす。電池もいっぺん取ッかえてンだが、ちか比(頃)ハ使わないで切っていてもまいにぢ(毎日)充電しなけりやへたッちまう始末ヨ。そいぢやァ持たなけりやァいゝだらふッてご異見もありやしょうが、そこはそれ、歳でやすからネ。いつどこで行き倒れるかもしれねへ。そんなとき、鳥渡牡丹(ボタン)押すッてェと、たちどころにあっしの倒れどこが火消所に知れて、救急車が素ッ飛んできてくれるッて仕掛けがあるんで、どうしてもこいつァ持って歩かなきやァなんねえのヨ。
 そいでもって、ついこないだ雷門辺(へん)の電話屋ィ行って手比(頃)なやつと取ッかえて来たと思ひねへ。こンころの懐電話はやたらとすべッこくできてるネ。つるりト滑って落ッことして壊し、また買替えなんてことたくらんで作ってたンのかねェ。なんせこちとらぢゞいで手指に脂ッ気がねえから、物がつるりとよく滑りやがるのヨ。で、落とさねえ算段に、けちな根付のひとつも付けておいたがよかろふと、仲見世で見つくろったのヨ。そいが瓢箪の根付サ。お代は紛いの中南鐐(ちゅうなんりょう)三ヶで釣りがこようッてェ代物だからてえそうなもんぢやァねへ。珊瑚色したちッこいもんなんだが、いざ銭払おうとしたら見世の上さんが、これはこふなってンのよト瓢箪の胴中(どふなか)をひねって開けてみせてくれた。なんとその耳の穴よりちッせえ胴の中から、赤黄白黒緑の芥子粒みてへなのが転がり出やがった。ホラ中に瓢箪が五ツ、外のとあわせて六ツ、これで無病息災よト洒落やがった。老眼こらしてよく見りやァ五色の芥子粒メ、みんな瓢箪の恰好してやがる。こまッしゃくれた芸当するぢやァねえか。やりァがるなァ。泣かせるよダ。
 よく世間ぢやァ無病息災もいゝが一つぐれえ病(やまい)を持ってる方が要心するからかえって長生きだなんて言ふヨ。一病息災ッやつだ。デダ、あっしやァ指ィ折って数えてみたのヨ。いくつ病持ってるかってネ。なんせ病は長生きの元だってんだから、数え落としちやァいけねへ。そしたらあったねえ。立派なもんヨ。鳥渡聞いてくんな。初ッぱなが三十路半ばの中心性網膜炎。こつは左目が一手に引き受けて厄年までにはっきりしたんで三べん。やわなの入れりやァ七八遍患ったヨ。つぎが胸腹部乖離性(かいりせい)大動脈瘤でいっぺんめの危篤。それから腎不全で危篤一歩てまえで透析に。またも左目、白内障でレンズを入れる。そのつぎは大腸穿孔で二度目の危篤。腹ァ二遍ぶち割ッたゼ。つづいて腸閉塞を二遍。これでどふだい、六病になろふが。おッとお忘れ\/。五十年めえに盲腸をいっぺん。こりやァどなたさまもいっぺんこッきりか。それからてめえぢやァ覚えていねへが、おまえハ銀杏にあたって二歳ンときに死にそこなったンだよトおっかさんに聞かされてッから、都合八病か。どうでえ。一病息災ッて、たった一病で息災だってんだ。こちとら八病ヨ。八倍元気ッてことヨ。ざまァ見やがれ。おいらァ死ぬ気がしねへヤ。

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コメント

喜三二賛へ

小さな瓢箪五個。
色がいいですね。
陰陽五行論では、五色は赤、白、黒、青(緑)、黄です。
五つの瓢箪は陰陽五行論の色ですね。

銀杏は私の分析では、年齢と同じ数だけ食べてもいいのです。
それ以上食べてはいけません。
成人は、一年で最高七十個まで銀杏を食べてもいいでしょう。

幼少の頃の喜三二賛は食欲が旺盛だったのでしょう。

奈の字

moon3奈の字の旦那江

 こいつァいゝことおせていたゞきやした。そういう謂れがあったンですナ。ただの色ちがいぢやァなかったんだ。へなちょこ瓢箪もありがたみがましました。ほんにありがとふさんでやした。
 銀杏はそんなことがあったよッて聞かされてたから、五十くれへまで喰わずじまいでさァ。そいで大動脈瘤で生き残ったから、もふ鎌○奴ッてんで、恐る\/喰ってみたら、うめへのなんの。人生半分とこ損した気分ヨ。こんなことなら、せいぜい長生きして年の数ゥふやして喰はねへととりかえせねへ。
 旦那ハあっしよりお若いネ。あっしがかずえ(数え)二ツッ比(頃)のお江戸は喰ふもんなんかなんにもねへ。口にへりさえすりやァなんでも喰ったじでえですもン。銀杏なんておご馳走。空襲の下、運よく一年生き延びなきやァ口にできやせん。まいンちが最後の晩餐のつもりでおっかさんが喰わしてくれたんでやしょうが、そいつが裏目にでたッてわけでさァ。

 喜の字

その意気ですぜ師匠。
何たって負けず嫌いのやせ我慢で鍛えた江戸っ子だぁ。

それに師匠は文がうめえからね。
面白えは八難隠すって言いませんでしたかい?
八病くれえ、どってこたあねえ。
医者通いが欠かせねえおかげ様で、ざまあみやがれ病魔も付け入る隙がねえ、とみたね。

師匠、いつまでも達者でいておくんなさい。
でねえと人生の楽しみが減っちまわあな。

おらあ素手で銀杏ぶっつぶして洗ってすぐ食っても
どっこも何ともねえような大根だもんで、
ガキの頃ぁ病気や怪我に憧れたりしたもんだが、
こないだ右腕が利かなくなりやして。
痛えのなんの、歯も磨けねえ。
腕をかばったら腰と膝に来やがった。
にわか病人でございます。
(いけねえ、もうちょっとで放送禁止用語を書いちまうとこだったぜ、ふう)

moon3ねこじゃねえやいのお玉姐さん江

 そいつァ面(つら)の白いは七難隠すッてンだろ。
 姐さんは丈夫でだったんだねェ。その姐さんが右手が痛え。そいつァのろけぢやァねのかい。ご亭さんに、枕代わりに朝まで貸したなんて言ひなさんなヨ。
 マあっしもこのくれへの憎まれ口が言えるから、まだとうぶんくたばりそうもねへナ。ご安心\/。

 喜の字

んな色っぺえ話であるもんかい。
草刈りのやりすぎよ。
ご亭なんてのあ、あたしのこたあ苦力って呼んでやがる。冗談にならねえんだこれが。
日本人は明日の事まで今日やらねえと気がが済まねえ性分だから損さ。

moon3ねこじゃねえやいのお玉姐さん江

 ハハハハ、言えてるねェ。たしかにあしたの仕事けふやっとくとこあるねえ。安心するけど、気ぜわしくっていけねへ。でもそうしねへと落ち着かねえ。つくづく貧乏性だと思ふゼ、あっしら日本人は。
 腕ェ旦那にさすってもらいなせえ。そのくらいしないと躰がなまるよッてネ。

 喜の字

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