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2009年9月22日 (火)

【番外】鼻高屋の巻<十九>川柳ひとり柳戯溜(やなぎざる)

 気散じと 思へど塩屋の からみ餅

 きのふテレビでいゝもん見せてもらいやしたよ。人形町のある菓子屋を放送局のお人が訪ねンのよ。そいでご亭主にマイク向けて「こちらでは何にこだわってつくっていますかッてんだ。するッてえと親爺の歯切れがわりい(悪い)のヨ。口ン中でもぐもぐ言ってる。まァ詰めて言やァ、こだわるッてのは能(いゝ)ことじやァねへから、うちぢやァそんなことハしねえへッてのさ。そふヨ。固執するッてことだからネ、こだわるッてのハ。この詞のつかいどこハ「いつまでもぐじぐじこだわってンぢやァ莫迦やろふッてな按配だからネ。局の姐さん取りつく島ァなくなっちまって、慌てゝこふ訊いたネ。「こちらのお見世のご自慢はなんですか。そしたら親爺また言ひ淀んでたが、思い切ってこふ言ッちまった。「自慢ンゥ、そんなもんハねへ。ぶッきら棒なんで女将さんが跡(後)を引き取って、「うちの人は江戸ッ子なんで自慢するのは恥だと思ってゐるンですよトね。これよ。この気ッ風が江戸ッ子よ。手前味噌で鼻高々になるやつほどみっともねへ恥ッさらしはねへわけヨ。この江戸ッ子の性分が意気だの粋だの通なんぞを生んで、損得で動くやつハ屑よッてことになったんだろふよ。
 そんな気ッ風が好きであっしァ江戸ッ子の修業の道にへえったンだが、その世界にも履き違えの箆棒(べらぼう)がおりやすなァ。なさけねえ。おれがてめへより物知りだの、これェ知ってるか、こんなことも知らねへか、揚句の果てに江戸語知るには本などいらぬ、当世歌舞伎役者や町火消にひッついてりやいゝときた。江戸が終わってとっくに百年の余もたってンだ、いまァしゃべってンなァ東京弁ぢやァありやせんかい。そんなもんでハイこれが江戸語でございますなんてお手軽なこたァ言へるもンけへ。お生憎さまダッてんだ。たいこ(幇間)ぢやァあるめへし、こっちちらァ取り巻きやるほど落ちぶれちやァいねへヤ。ざまみやがれッ。江戸ッ子名乗るなら、ねちねちと当てこすりだの厭味だの女々しいご託ならべてからまねへで、すぱッと啖呵ァ切りやがれッてのヨ。啖呵ァ江戸の芸ヨ。頼みもしねへのに大先達ぶりやがる鼻高屋があっちからもこっちからも出てきやがッて、俺が前にゐる跡(後)ゥついて来なみてへな口きくねへ。こッちァ蔭間買いぢやァねへヤ。誰がてめへなんぞの尻ィ追う。自惚れもいゝかげんにしやがれ。鼻持ちならねへのが幅ァきかしァやがって、すッこんでろィッてんだ。
 憂き世を浮世に気散じト、しゃらくせへかまうこたァねへト判じもん、鎌○奴(かまわぬ)手拭肩にかけ、ぢゞい一匹余生々きてやらふと、江戸還りの道ィたどってみたハいゝものゝ、飛んで火に入る夏の虫と勘違いしやがって礼儀しらずに茶々の入れられ放題。うんざり運の尽き。鳥渡(ちょいと)しょっぱい一句となりやした。ご存じ塩屋は江戸ッ子が大の字付きで恥ト嫌う手前味噌。天窓(あたま。頭)に来るのひとつ上で、鶏冠(とさか)に来るなんて駄洒落がいっとき流行ったが、その手の江戸版。洒落本くりやァちょくちょく出てくる当時の時花(はやり)詞でござんす。こゝろハ、塩がなけりやァ味噌はできねえッてんで、手前味噌の上ェいく自慢しやがるッてこと。自慢屋ハ高慢野郎と毛嫌いされたんだ、覚えておきやァがれ。

 かんばん(招牌)を 外して男の 値が出来る

 二本差しは誰が見たって侍と知れる。だからわざ\/えばる(威張る)やつァ浅葱ッて呼んでさげすんだのヨ。浅葱たァ田舎侍が袷の裏にこの安物色の木綿をつけてゐたからだそうだが、洒落の通じねへ連中で、なにかと言やァせっしゃハ武士トえばる。野暮なんだよねへ。吉原なんか行ってみなッて。武士も町人もおんなじ扱い。差はつけねへのヨ。武士だから花魁にもてるなんてこたァありやァしねへ。侍鼻にかけるやつなんぞ下の下。武家に奉公する中間は侍ぢやァねえへがお仕着せの法被にやァ主家のご紋がへえってる。で、その法被ィ招牌(看板)ッてンだが、そいつゥかさにきて威張ッて伝法なことォすることがあるんで嫌われたわナ。いまの世にも似たよふなやつァけっこふおりやすゼ。人さまァおめえの後の招牌に天窓下げてンのがわかンねへで、偉さまになった気ィなってふんぞりかえへッちまってるご仁がネ。寅の威を借りるよもぎ団子ヨ。招牌から永のお勤めごくらふさんト暇(いとま)ァ出されてみな。ほんとの値ェ世間さまがおせへてくれッゼ。値が出来るッてのも江戸詞。値が決まるッてことサ。

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