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2009年5月14日 (木)

【番外】昼寝のおめざ

 ほとんどいちンちおきに昼下がりから養生所ィ往っちァ暮六ツすぎまでゴロ寝してくるいゝ身分もこの卯月(旧暦)半ばで丁度十と五年。寝ッぱなしに寝てもいらンねから退屈しのぎに本なぞ読むンだが、なんせそんときゃあ左腕ァあっしのもんであっしのもんじゃあねえ。養生所にあずけてぶっとい針二本ぶッさしたまんまなンで、きまゝになるのは右腕だけ。そんなんで片手で持って読めるとなりゃちっせえ懐本ぐれえ。文庫本ッてやつサ。もちろんあっしのことだ。読むもんハ江戸物だわさ。
 そのおもしれえのをめッけたのヨ。題して「格安殺し屋十六文 みだれ振袖ッてンだ。戯作者は松岡弘一ッてお人で、板元は学研ヨ。格安殺し屋十六文は添題になっておりやすが、仕舞まで読んでみると、この跡(後)も松岡のこうィッつあんはつゞけてお書きなさる腹らしい。だからこいつを連作の題になさらふッて仕掛でやしょう。
 この殺し屋、蕎麦屋の一家でやってンだ。一家ッたってあいまいなもんで、親父の七五郎に息子の常吉、その嫁のお民。二人は祝言は挙げてねえ。七五郎にァかゝァはゐねえンだが、外にいゝのがゐる。それが拝み屋のおもん。これが滅法界いゝィをんならしいンだ。あっしァ見てきたわけじァねからしかとはわからねがネ。そのおもんのとこに、拝んで恨みを晴らしておくんなせえッて頼みが持ち込まれる。おもんがそいつを七五郎につなぐッてわけだ。息子の常吉は親父の手。仕掛賃ハ十六文。表の稼業が蕎麦屋だからァてンで洒落を利かせたッて寸法サ。よくそんな小銭で命懸けの殺しをやるねえト按じたくなるが、そこはそこ、つなぎのおもんがそれなりの金をとるンで十露盤(そろばん)は取れてるッて仕組みなんで、読手のあっしがしんぺえするこたァねえらしい。御本家の仕掛け人梅安のほうじゃあ百両も二百両もの高直(こうじき)でやるンで、このべらぼうな安値はそいつを逆手にとっての洒落とあっしゃ見たね。
 戯作のゝッけにゃあこんな前書がある。引いてみやしょう。

  汚れ汚れた世の中で
  神も奉行も裁けぬ悪党は
  送って進しんぜよう地獄道
    江戸末期 たった十六文で殺人を請け負う殺し屋がいたという。(江戸裏職尽 佐伯卓真)より抜粋。

 この一文も洒落てやしょう。どっかで聞いたことがあるような。江戸裏職尽ッてのハほんもんかねえ。こいつも、松岡旦那の戯れ文くせえなあ。

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コメント

廉価版必殺仕事人ですかぃ。考ぇようによっちゃ、現代的でもありますなあ。元刑事のらぁめん屋はうちの近くにおりやすが、蕎麦屋ったぁ……。

moon3ひぐちの兄哥江

 その、らァめん屋のとッつあん、あんまり商売ッ気ねえッて言っておりやしたよねえ。そりやァくせえなあ。裏があるんですぜ、きっと。鳥渡(ちょいと)匂わせてみなせえナ。らァめん一杯の値段でいゝぜ、なんて返事がけえってきたりしてね。

 喜の字

十六文がいいですねー。
その前書き、もっともらしいけれど、これも作者の仕掛けでしょね。愉快だこと。本屋を覗いてみます。

moon3風知草姐さん江

 儲けようッて根性がねえのが、賤しくなくッていゝやね。そうゆうのォあっしァ好きヨ。金ェつまれて動くやつァ屑だもんナ。

 喜の字

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