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2009年2月18日 (水)

【番外】〈十四〉川柳ひとり柳戯溜(やなぎざる)

   さむらひハ 主従三世の 深き縁

 浄瑠璃の牛若千人切斬にこうある。げにやしゅじうは三世(さんぜ)の機縁と聞くなれバと。主従たァ主(あるじ)と家来のことヨ。士(さむらひ)ッてのハなんだッてネ。そちハわしの家来になれ、ヘイようがすッてんで、主従の間柄が決まる。そうすっと、わしの家へ来いッてわけだ。そいで家来ッて言ふぢァねえかとあっしァ思ふのヨ。ついてッて主の家に住み込む。家来の勤めッてのは二六時中だからネ。日が暮れやしたから、殿、跡(後)ハご自分で、ハイさいならッてえことハねえンだ。戦が仕事だから、いつなにがあるかわからねへ。で、昼も夜もそばについてる。はなに祿高いくら\/でッて決めるのもゐりァ、取り決めなしで、来い、ヘイ合点ッてんでトぜんぶ主にまかしちまうッてのもあったらしい。こんなとこからも、士はとりわけ金銭を口にすることハ賤しいとしたッてえことがミえる。江戸の町ァその武家の町だから、それが江戸ッ子の気ッ風の骨ェなって、損得で動くやつァ屑よッてえ任侠の気が生れたんでやしょうナ。
 殿様の方も、いったんてめえの家来になったもん(者)は三代にもわたるくれえ面倒みた。子(こ)孫(まご)の代まで引受るわけヨ。稼業ッてのも変だが、そうぢャなきァ命かゝるンだからやれねえヤ。おめえの命ハわしに預けろ、万が一のことがあれば、子はおろか孫まで喰ふにハ困らせぬッてえことだろう。そいで、三世(さんぜ)の機縁と言ふンだろうとあっしァ思ふネ。これはあきんどや職人の間にァねへことサ。お店(たな)に勤めたからといって、それの子が親父の跡ォついでそのお店にへえるッてことハまったくなかったゝァ言へねえだろうが、まずねえわナ。職人もそうヨ。親方に弟子入りしたッていずれ一本立ちになって出るンだ。
 主従三世のめえに来る詞もあって、夫婦(みょうと)は一世、親子は二世、主従三世。みょうとト親子ンとこはあっしのうろ覚えだから、もしか違ってたら勘弁なんだが、夫婦の縁は当りめえだが一代限り、親子は親が子を育てるがもんだから二世ッてことになるわナ。孫は子が育てるもんだから、三世にァならねへわけだ。師弟の間はみょうとにおよぶかどうか。師が弟子の一生を見ることハねえから、あきんどや職人とおんなじ、弟子が一人めえになりァ離れる縁なんだろうネ。

   さむらひハ 祭近所とつきあはず

 江戸でも三社祭だの天下祭と呼ばれた山王社と神田明神の祭礼などが親玉格だが、こりァみんな町人の祭。士(さむらひ)ッてのはそういうものにァかゝわらなっかそうだネ。元和元年(1615)に山王祭の行列が初めて千代田のお城にへえったンだが、それにァわけがあってもと\/城中にあった社が二年めえの慶長の十八年(1613))に城の外に移されたからだそうヨ。
  また士ッてのハ士同士で屋敷を並べてゐても近所づきあいはしなかったンぢァねえかネ。そんなことすッと、あいつら謀叛をたくらんでンぢァねえかと痛くもねえ腹ァさぐられる。侍が横つながりでひとまとめになって殿に仕えてるわけぢァね。横のつながりより、縦のつながりなンだな。
 そんな風潮は、戦後のいゝ加減まで東京の杉並辺(へん)にァ残ってゐたネ。あすこハ丸の内の勤人が地所が安いッてんで住みついたとこだが、丸の内の勤人てのハ元々維新政府の関係の昔の藩の下級武士の末裔でやしょう。下町だの深川本所浅草の長屋の店子(たなこ)のように、ひっついた付き合いはしねえもんだと思ひやすゼ。これハ徳川の旗本や御家人もおンなじでやしょう。たがいに立ちゐらず、迷惑をかけずかけられずッてえのが、武家の心得だとあっしァ思ひやすナ。まァべたつかねえッてことヨ。それが江戸の気ッ風のあっさりしたものを生んだぢァねえかねえ。

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コメント

勤め人がまわりにあんまりいなかったから、三世続くかどうかは皆目分からねえ。

それよりあたしゃ近所付き合いが苦手でいつも困るんだ。

縦長屋で育ったせいかねえ。
顔あわせりゃ会釈はするし、名前も知ってるくれえの仲なら一言くれえ挨拶もしようが、ゴミ当番の人が今日は来なかった、なんてグチ聞かされると死にそうになるね。あたしなら自分で掃除しちまうから。

そういうのは、各自が気がついたとこをチョチョッと片付けりゃあ、ひどくなることもねえのよ。
お招きいただいた時だって、食う度に自分の皿だけでも洗っとけば、女衆が居残って片付けなんぞしなくていいんだ。
子供の自慢も堪忍してくれ。
本気でもねえのに褒められやしねえ。


だがね、もし本気でいいなと思うことがあれば、口に出さねえといけねえ、と近頃反省してんですよ。

お世辞じゃなくて、本人もきっと知ってるだろうチョッとした美点なんざ、わざわざ口にすると、それだけで人タラシになれる。
実例をみて感心してね。

そいつは男色なんだが、けっこういい男でね。
あるしょぼしょぼしたばあさんにいったんだ、出会い頭に「あなたの瞳はきらめいていますね」って。
これが、本当に目は綺麗だったんですよ。

それを聞いた瞬間、その女の人は背筋が伸びて、ほんとうに10歳くらい若返ったような足取りになったのさ。
あれにゃ驚いたね。部屋に入ってきたときゃ、同い年のはずの旦那より、十や二十は老けて見えてたんだから。

それ以来、あたしもいいと思ったことはすぐ言わなきゃなあ、って心がけてますのさ。そうそう口には出せませんがね。

moon3ねこじゃねえやいのお玉姐さん江

 そいつァ姐さんハ武家の血ッてえことヨ。武家ッてのハ井戸端でおしゃべりなんぞしねえのヨ。そんなこたァはしたねえことなんだ。それが躰にしみついてッてから、離れてンのサ。朱に交わって赤くなるようなンは、てめえを保てねえ骨なしなんだから、そんなンのに惑わされこたァねえのヨ。どこに住んでも、江戸ッ子ハ江戸ッ子だヨ。そのてっぺんが徳川さんの直参旗本御家人ヨ。これからもその意気でいっておくれヨ。

  喜の字

先祖は徳島の漁師と長州の武家らしいがねえ、家系図なんてのは嘘がほとんどだからねえ(笑)

あたしゃ前世は四角四面の侍で、煙たがられてた気がするよ。若旦那だった気は一切しねえのが悲しい所さ。

moon3ねこじゃねえやいのお玉姐さん江

 血ッてえのハおもしれえもんだと思ふネ。二親の血筋から半々にァうけつがねえンだねェ、これが。一つ飛びみてに祖父さんだの祖母さんからだの、そのもっとめえだのゝ血が濃くでたりするみてえだネ。
 あっしのおッかさんて人はほんとに四角四面、曲(きょく)もなんもねえ女ヨ。あれぢァ親父ァ家にゐねえさワ。
 そのおッかさんの性分思い出すッてえと、どうみてもありァ代々江戸の貧乏旗本か御家人。辛抱が習い性になっちまってンだ。窮屈ッたらなかったねェ。
 死ンぢまった漫画家の杉浦日向子姐さんが、おもしろい事を女はもちころしッて川柳があるよッてある本の中で書いてるけど、まさにそれヨ。

  喜の字

moon3ねこじゃねえやいのお玉姐さん江

 血ッてえのハおもしれえもんだと思ふネ。二親の血筋から半々にァうけつがねえンだねェ、これが。一つ飛びみてに祖父さんだの祖母さんからだの、そのもっとめえだのゝ血が濃くでたりするみてえだネ。
 あっしのおッかさんて人はほんとに四角四面、曲(きょく)もなんもねえ女ヨ。あれぢァ親父ァ家にゐねえさワ。
 そのおッかさんの性分思い出すッてえと、どうみてもありァ代々江戸の貧乏旗本か御家人。辛抱が習い性になっちまってンだ。窮屈ッたらなかったねェ。
 死ンぢまった漫画家の杉浦日向子姐さんが、おもしろい事を女はもちころしッて川柳があるよッてある本の中で書いてるけど、まさにそれヨ。

  喜の字

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