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2009年1月12日 (月)

【番外】宇江佐真理江戸勉強(うえざまりえどのべんがく)

 江戸の市井もんを書かせたら、宇江佐の真理姐さんハ断凸(だんとつ)トあっしァ思ひやすゼ。とりわけ髪結伊三次の一連のもんがいゝねえ。なにがいゝッていゝ仲の文吉姐さんが啖呵切るときの科白なんぞ、胸がすかッとしやすゼ。文吉姐さんてのハ羽織[※]でネ。意地とはりッてえのハこういうことだねッてえ感じヨ。あんまり歯切れのいゝ江戸弁だの江戸の口調でお書きだから、宇江佐の姐さんハてっきり深川か本所辺のお人かと思ったら、なんと函館の女(ひと)ヨ。そこで生れてそこの手習指南所出て、いまもってそこにゐるッてんだからすごいゼ。函館ッていやァおめえさん、蝦夷地だゼ。訛りのみちのくのまだ先だヨ。そこでべらんめえダ。あっしァ天窓(あたま。頭)ァ下がるゼ。今日びの物書きさんでも江戸のことほとんど調べもしねえで書いちまう度胸のいゝお方がけっこうおりやすが、ちょいと聞きかじったあっしでさえ、こんなこたァねえよッてのが多いが、この姐さんにァ感服いたしやしたもんネ。
 桜花(さくら)を見たッてえ外題の文庫本がありやしてサ。そんなかに、別れ雲ッてえ短編があるのヨ。湯屋ッて詞が出てくる。江戸は湯屋サ。銭湯とも言ったらしいが、湯屋が通り相場サ。よしねェな、なんて詞も出てくる。目につくとこをざっと上げてみようか。お店者(たなもの)。姐さんのお店ですかい。ついでと言っちゃ何んだが。ささ、どうぞ。この店のもんは皆、父っつぁんが造るんですかい。床几に座った。世辞抜きでいい筆ですね。こまっしゃくれた飾りもねェし。一丁前に能書き垂れるところは。何んやらですかい。懐から紙入れを取り出した。あんな半鐘泥棒みてェな息子ができた。商いに長(た)けていたし。仇になっていたようだ。仕舞屋(しもたや)。表徳(雅号)。こんがらがる。小伜(こせがれ)。横丁の隠居。鯛蔵さんの話があんまり奮(ふる)っているもんですから。信濃者(おしな)。一本立ち。間夫(まぶ)。衣紋竹(えもんだけ)。吉原(なか)。
 切りがねえからもうやめッけど、いっぺん読んでみな。そこら中に江戸があふれてゼ。てえした勉強なすってるッてえことヨ。こういうお方のもんハ読んでてうれしいねえ。読み手をなめてねえもんナ。
 この別れ雲のつぎにおさまってる酔(え)いもせずッてえ戯作もまたいゝねェ。この題ハ杉浦の日向子師匠にゑひもせすッてのがあるが、そっからひらめいたのかもしれねえナ。書いた年代調べなきァうかつなこたァ言へねえが、あっしァそんな気がしておりやすのサ。ま、騙されたと思って、いっぺん読んでみねえナ。鳥渡(ちょいと)並の戯作者とは違うトあっしァ睨んでンだがネ。

【附(つけた)り】
[※]羽織。深川芸者のこと。女だてらに羽織を着たのでその呼名がついた。羽織は黒。

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コメント

私も宇江佐真理さん 好きです。
髪結い伊三次は全部、面白く読んでいます。
「桜花を見た」読みました。
いいですね、江戸の世界で遊ばせてもらいました。
この方の新刊(文庫本)が出るのが楽しみでなりません。

お名前は目にしてましたが、ひとつも読んでいません。喜三二さんのお話読んで、これは明日にも本屋さんに行かねばと思ってます。文庫本見てみまーーす。

あのお方は北海道の方と聞きましたが、それならあっしが江戸の風吹かすなんて事も、精進の末にゃあできねえ事もあるめえ?

風邪ならすぐ引いてみせるんだが。それじゃあなあ。

あ~、やっぱり同じことを思っていらした。

文のあちこちに「そうだ、これ言ってた!」というのがありましてね、いっつも嬉しくなってしまいます。

しもたやという言葉も聞きませんね。シャッター通りになってしまいました(笑)

彼女がなんで賞を取れないのか不思議です。もっと評価されてもいいと思うですけど。

moon3おあやのお内儀さま江

 お内儀さまもご贔屓筋でしたかい。やっぱり判るお方ァ判っていなさる。うれしいねえ。読み手がそういう出来た戯作者をでえじにしねえと、乱雑作家がはびこッちまいやすもんねえ。お頼みいたしやすヨ。

 喜の字

moon3風知草姐さん江

 ぜひおすゝめですゼ。山周だの山力だのように人情の安売りしやせんしネ。そうかッて言って平弓みてえに特権の厄介者が坊ちゃん\/なんて甘やかされて当然のように振る舞ってる心得違いのもんも書かねえしネ。人情なんか求めて他人に寄っ掛かっていこうとしねえ江戸ッ子の実が書かれてるように、あっしにァ思えるンで好きですワ。
 おっとそれから、岡ッ引き目明かしとか呼ばれたものハ実正(ほんと)はこうした経緯で定町廻り同心の手下にならされ、こんな風に動いていたンだッてこともちゃんと書かれておりやす。髪結い伊三次のはなの咄ですがネ。

 喜の字

moon3ねこじゃねえやいのお玉姐さん江

 どんなに遠く離れてたって、魂さえもってりァ江戸ッ子ですぜィ。風邪でもインフルエンザでも、どん\/吹かせておくんな。他人さまにいっち気遣いしてけっして迷惑をかけねえ心構えをもつ江戸ッ子に世界のお人たちがなりァ、世界はいまよりずっとよくなるとあっしァ思ひやすぜ。そっちの嶋ァ姐さんに任せたゼ。

 喜の字

moon3しみちゃん姐さん江

 明治からこっち、かっぺが大手振ってるじでえになっちまったンですワ。その中で孤立無援悪戦苦闘してついに胃弱で死んじまったのが漱石だとあっしァ思っておりやすのヨ。
 風流本とか人情本、狂歌、川柳、こりァ代々江戸の水道の水で育って三味の音と吉原の灯ン中で磨いてこねえとできねえ芸当サ。ところがご維新になって、江戸は御破算に願いましてはとなった途端に野暮天の田舎もんの西洋かぶれが、筆の世界の天下とっちまって、いまだにくそ面白くもねえ純文学なんて妙ちきりんなものこせえてこれぢァなくちァ駄目だなんて言ってッから、文芸は死ンぢまったんでやしょうヨ。
 評価する方があいかわらず物が判ッちァいねへ。そんなとこぢァありやせんかねェ。悲しいねえ。

 喜の字

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