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2009年1月25日 (日)

銀蕩女持喜世留(しろがねあそびめもちのきせる)

Photo  京橋から一本下(しも)の中橋を、渡って当たる水谷町、そのまた外れの河ッ岸、江戸の比(ころ)なら町並どころか、家一軒建つ空(あき)もなかった水ッ際、いまぢァ押しも押されもせぬ銀座は一丁目。その隅っこに立ち上がる西洋建物ン中、いつのまにやら骨董街。その名も洒落て南蛮の、あんてぃーく・もーると招牌(かんばん。看板)を、掲げてあつまる古物古美術あきない。蔵の中から引き出したか時代ついたるその匂い、つい釣られてふら\/と、迷い込んだが運の尽き。びいどろ戸棚の奥でくすぶる華奢造り。こいつァ女持の烟管ぢャねえか。羅宇竹にァ焦茶の飛び模様。これが鼈甲模様ッてものか。ほんの唐物か箱根芦ノ湖向ふ岸生まれの竹に細工の鼈甲仕上げ、真を見分ける利き目があるぢャなし。吸口雁首、いぶし銀。姐さん、鳥渡(ちょいと)棚から出して拝ませておくんな。鍵束じゃら\/棚戸を開けて、ハイお客さんト手渡されたる烟管、ためつすがめつ眺めてミたが、銀の流しか無垢物か、はたト悩んで訊いてハみたが、さァと頼まれ店番返事に力ァへえちャいねえ。訊くだけ野暮ト観念し、ヘイありがとさんトお返しゝ、見世から見世、棚から棚ト素見(ひやかし)て、いっち奥に水茶屋見つけ、煎茶いっぺえ香りで二へえ、ぼんやり一息ついて、気がつきャ思案首。オッとこいつァわりい(悪い)癖が天窓(あたま)もたげた。そんなに先があるぢャなし、鳥渡(ちょいと)素ッ首のばせばころり\/と石ころ河原が見えそうな死ぞこない。これからなんか手にいれたとてなんになる。物はかわねへ減らすだけ。大井川ぢァあるめえし荷物丸めて天窓ァのせて三途の川渡った亡者ハひとりもゐねえ。ヱェィッさっぱり未練を絶ち切ンな。ト腹ァくゝろうとするほどに、いぶし銀やら寝ぼけ銀、鼈甲羅宇竹まぶたに浮かぶ。まゝヨ、娑婆の見おさめ遊(あすび)おさめ、残りの歳月あの女持で洒落者ぶって過ごしてミるか。齢(よわひ)重ねて病も重ね、とうに危篤の声も二度三度、いまさら危篤の声におどろくようなお兄哥(あにィ)さんとハお兄哥さんが違って、いまぢャ三日めえのもやしみてえなへな\/ぢゞい。男と言へど勇(いさみ)の兄哥が喧嘩道具にするような、松の根ッこまがいのぶッとい烟管が似合うぢャなし。女持が丁度のお似合いトてめえで決めて合点をし、も一度棚へひっけえし、わりいが姐さんモいっぺん拝ませておくんな。しげ\/見ても判らぬものハやっぱり判らぬ。骨董は買っておぼえろが決まりの極意。えくぼに惚れて手にした途端、そいつァあばたト知るのも勉強。男は度胸、女は愛嬌、坊主は説教でおかずはらっきょ。姐さん決めたゼ、包んでおくれ。烟管ばっかし見ていたが、叺(かます)ト共布の烟管筒がついてゐて、これハこれでミごとな造作。叺の口金は四分一(しぶいち)か。針金のごとしの繊細造り、裏を返してミりァ留具の爪がなんの材やらしれねえが溜漆で二巴三巴の描き入れた凝り性仕事。内布はぱッと目が覚める金茶の絹、むかしァなんて粋だったンだろうねェ、この国ァ。
 塒(ねぐら)に戻って銀磨薬、ひと塗りして布でススッとぬぐやァその名の通り白く輝く銀(しろがね)造り。吸口を斜(しゃ)に継いだ洒落ッ気に惚れ\/させられる細工の妙。雁首はしろがねの火口を継いで文字通りの曲(きょく)とした職人の心意気が見どころ。渋い銀色は四分一か。急度(きっと)そうと独り決め。すっかり悦にいっての面(おも)ちょろ道具。帯に挟んで、サテ。煙嫌いの野暮天現世、どこの水茶屋いったらや、こいつで決めて煙(けむ)ゥ吐けるやら。使ふミとほし靄のなか。

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コメント

写真を拝見するだけでも、素敵な烟管ですね。

わたしは煙草を吸う習慣がありませんが、こういう細かい細工のお道具には心惹かれます。

喜三二さんが、ひと目見て気に入られた烟管。
きっと、煙草の美味しさもひとしおしょうね。

喜三二さんがお持ちの素晴らしいコレクション。
またぜひ紹介してください。楽しみにしています。

moon3ひよこ姐さん江

 あっしだって吸ってるなんて言へるようなもんぢァありやせん。ふかしてるだけ。ほんの真似事でさァ。
 莨(たばこ)ハ三十年もめえに思い立ってぷッつり止めちまってそれッきりだったンでやすが、これたァ別の銀延べの、やっぱり女持のほっそりとしたせるき(烟管)に骨董屋で出会い頭に惚れて買ったが縁、焼けぼッくいになんとやらで、喜世留につられてたまァに吹かすようになったンですワ。
 そいでこれが二本目。集めてるわけぢァねへンだが、どうも目が惚れやすくていけねえヤ。
 めえの銀延べのも、確かめえにこの手控帖に写真撮って書いたと思ひやすゼ。お暇があったら繰って見ておくんなせえナ。

 喜の字

仕草に惹かれて、小道具欲しさに買っちまう。

そんなものが煙草にはありますねえ。

あれぇ買っときゃあよかったなあ、などと後々思っていると、実物よりさらに良かったような気がして、口惜しくて眠れなくなりやすからね、見たときに買っとくのがようござんす。

それにしても女持ちのキセルなんて、若いもんにゃあ真似できねえよ。生臭になっちまうからね。

なんだえ、粋が過ぎて、次ぁ比翼紋の帯、なんて羽目にならないでくださいよ、喜三二の兄哥い。

moon3ねこじゃねえやいのお玉姐さん江

 ちげえねへ。粋が過ぎると、落語で笑者にされてる若旦那みてえな態になりやすもんねえ。気ィつけて、道楽もこれッくれえにしとくかな。

 喜のぢゞい

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