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2008年12月21日 (日)

【番外】一力心中

 書肆(ほんや)をひょいと覗くッてえと、戯作(しょうせつ)の分厚い単行本が目にへえったのヨ。外題ハたしかありァ、粗茶を一服ッて書いてありやしたネ。角書(つのがき[※1])ぢァねえが、横ッちョに損料屋喜八郎始末控えとありやすのサ。損料屋てのハ銭金もらって物ォ貸す稼業だが、あっしが気になるのハ尻(けつ)ンとこヨ。控えッてえのハ、どういうことなんだろうねェ。戯作者は江戸物書かしたら、ちか比(頃)ァ一だ二だのッて言われる山本一力師匠、板元[※2]ハ天下の文藝春秋ヨ。それがサ、控にえの字ィ送ッてえる。こりァ多分、師匠のうっかりに、文春さんもつゞけてうっかりしなすッたねッてところなんだろうが、あっしァ悲しくなるゼ。編集さんだっておりやしょうし、校正の玄人も揃えておいでの立派な板元さんでやしょう。それがこの始末サ。
 ちか比これが多いのヨ。控は物の名前。西洋文法で言ふところの名詞でやしょう。名前に活用はねへ。だから、送仮名はつかねえものと思ひやすゼ。送仮名がつくのハ使い方で言葉が変わるときだけでやしょう。控える、控えねへ、なんてときだろうヨ。これもむかしァ、えの音は変わらねへンだから、送仮名にして漢字の外に出さずに控るッて書いたはずだゼ。それを見た目の優しさッて甘やかし癖でどんどん外に送りだしちまうようになりやがってサ。
 ま、鳥渡(ちょいと)本題から外れたから戻しやすが、物の名前に送仮名がついちまう奇妙奇天烈(きてれつ)な元は電脳箱だゼ。そんなかにへえってる和玄人(わーぷろ)ッてのがありやしょう。一力師匠も板元の組方もそいつゥ動かして文字書いてるンだろうが、それに鳥渡ばかし不精仕掛がありやすのサ。日本語の仕掛つくったお人たちァ言葉の玄人ぢァねへンだろうねェ。なるたけ少ねえ手間で仕上げちまうふッて魂胆なんぢァござんせんかい。たとえば、この控ヨ。物の名前ンときハ控、活用のあるときァ控えッて分けるト二ツつくんなきァなんねへ。そいで、源(みなもと)の形を控えにしておいて両方兼ねさせちまえば、仕事がはえへッて算段ヨ。この例はいっぺえありやすゼ。気持ちなんかもそうだ。気ト持つヲ併せて気持ちにしちまったのヨ。気持ちハ実正(ほんと)は気持だゼ。気持に送仮名なんかねえのサ。大本の形ハ持つ一ツにして持はやめておきァ、持たない、持つとき、持てばッて按配に変えることができるンわけサ。辞書屋も甲斐性なしサ。和玄人つかって世間の多くが気持ちッて送仮名付で書くもんだから、それも有ッてことにしちまって、気持または気持ち、どちらでもよしなんて、骨のねへこと書いてやがる。名詞に送仮名があってたまるけへ。この送仮名ッて詞だってそうヨ。あっしの電脳箱の和玄人から出てきた文字を、そのまゝこゝに書いてみやしょうかい。こうなッてるンだゼ。送り仮名。おめえさんの和玄人ハいかゞでえ。送仮名ですかい、それとも送り仮名。気持ですかい、それとも気持ちですかい。
 文春(ふみはる)姐さんもそこんとこちゃんと直していかねえと、一力の物書師匠といっしょに相対死(あいたいじに[※3])になっちまいやすゼ。

【附(つけた)り】
[※1]角書(つのがき)。本題の上に小さい文字二行で付ける副題を牛の角に見立てこう呼ぶ。
[※2]板元。江戸時代、印刷物は板木に文字や絵を彫り刷ったので、この文字が使われていた。
[※3]相対死(あいたいじに)。心中、情死、の意。江戸法律用語。元禄の頃より、近松の戯曲などの影響などで心中が美化されて流行ったため、八代将軍吉宗が心中の語に代えて使わせた。

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コメント

電脳箱がこうです、と言えば、
あ、そうなのね、
ということなんの疑問も持たずに着地する人が多くて・・・。
姨捨山への道を歩むわたしなど、お仕事いただくのは30代の電脳世代。まともな神経なら憤死してるんですが、でも生きて行く知恵でしょうか、なんとか生きてます。

名詞に送り仮名、あってたまるか!
ほんとです!
いまに子どもの名前に送り仮名ですかも。


moon3風知草姐さん江

 こどもの名前に送仮名ッてのハよござんすねェ。洒落がきいておりやすヨ。その内、出てくるかもしれやせんナ。名詞に送仮名がついてンのを奇怪しいとも思わねえ人ばっかしですもんネ。

 志ん生なんてのも、考えたら鳥渡(ちょいと)妙でやすもんネ。先取されてたかなッてネ。

 喜の字

佐伯泰英師匠もかなり、きてますぜ。

まあ、売れっ子だし、忙しいからってのもあるんでしょうが、あっしはこのシトはハナっから文法がアヤシいと睨んでるんで。特に敬語がおぼつかねえ。

まあ、話さえ面白きゃあ、敬語くらいあとからでも勉強はできるからいいんですがね。

それにしても、版元がすこし直しゃあいいのに、そのまんま。あげく、和素人で文章切り貼りして、どうみてもこりゃ削除するつもりだったろうという元の文章が、脈絡なく挟まってるってえ、ていたらく。

どこを換えたか赤鉛筆の痕が見えるじゃなし、和素人のなまじ小ぎれいな刷なんざ読みとばしてちゃあ、まともな版元仕事はできねえってことさね。

moon3ねこじゃねえやいのお玉姐さん江

 駄目が大手振るじでえになりやしたねェ。
 いまぢァ知らねえことハ恥でもなんでもねえことになッちまって。書手もシロ、板元の若衆(わかいし)もシロ。クロがゐなくちャなんねえ処(とこ)もいまァ真ッちろけだもんネ。銭金になりァいゝのかねェ。

 喜ンの字

こんどっからあ、白人(シロト)さんで書かせていただきやす。ご教示ありがとうござんした、師匠。

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