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2008年12月29日 (月)

【番外】〈十三〉川柳ひとり柳戯溜(やなぎざる)

   さむらひの 妻子兄弟 扶持の外

 士(さむらひ)の禄だが、時代劇の捕物でお馴染みの定町廻同心のが判りやすいンだが、あのお方たちァ三十俵二人扶持。石ではなく俵でもらうのを俵取りッて言ひやして、これを毎年に春夏冬の三度に分けていたゞく。扶持ッてえのハなにかッてえと、食い扶持なんだね。一人いちンち玄米五合。そんなに喰ふのかいッたって、玄米だからネ。こいつゥ搗(つき)米屋で七分搗きの白米にすりァ三合半、六分搗きなら三合に目減りするハな。その上、米で搗賃をとられたりするから、もっと減る。これを朝まとめて炊いといて喰ふわけヨ。おかずなんてあんまり喰はねえ。そんな銭もねへ。飯で腹ァふくらませンだから、このくれえ楽に喰ッちまう。でダ、この二人扶持の一人は当然その家(や)の当主、もう一人は奥様の分ぢァねへのサ。武家の禄ッてのは、兵のために支給されてンだから、奥方だのお子だの当主の兄弟姉妹なんかは十露盤(そろばん)の外ヨ。そいぢァもう一人分の扶持はッてえと、それは主の部下で従者の分ヨ。二人分の扶持のお手当てがあるッてことハ、共を一人抱えてゐろッてことサ。いざッてえときァそいつゥ連れて戦場(いくさば)へ駆けつけろッてことだ。武家ッてえのハ普段から戦の構えでゐなきァなんねえンで、同心が奉行所へ出仕するときにも共に挟箱ッてえのヲ担がせて行くのが決まりになってゐて、その中にァ捕物に出るときの草鞋から装束一式を入れて歩いてたンだネ。そんな装束、奉行所に置いておきァいゝかッてえと、いつなんどきでも働けなきァなんねえから、行き帰りも夜中の屋敷でもそれが手の届くとこになきァいけねえことになっておりやしたンだネ。そいで、三十俵ッてえのハなんのためかッてえと、そいつァ定められた軍備を整えておくためとその二人の暮らしの費用だってわけサ。
 江戸じでえにへえって落ち着くまで、士ァ家らしい家なんかで暮らしたこたァあんまりねえ。戦場で野宿だの城にこもって守りィしてゐたンだが、戦がなくなったら士も人の子、かみさんを持つわナ。トすると子が出来やしょう。そうすっと口が増えちまうわけだ。だが、抱え主の殿の方ぢァ戦の要員としてしか禄ハだせねえンで、太平の世になりァなるだけ暮らし向きが苦しくなッちまふッてわけサ。もっと禄を出してやるにァ農民から年貢をしぼらなけりァなんねえが、四公六民、五公五民がいゝとこで、あんまり年貢を高くすりァ一揆が起きて、元も子もなくなる。だから税は増やせねえ。だが、武家は子が親になりまた子を産んで、代々で増え続ける。着る物も諸道具もだん\/目が肥えていゝもんが欲しくなる。あすび(遊び)したくもなる。金がかゝるようになって当りめえ。こいつァ苦しくなるわけヨ。

   さむらひハ 二百余年も 高楊枝

 江戸じでえ(時代)てェのハながいネ。二百六十年あったッてえからてえしたもんだゼ。家康さんが将軍におなんなすッて、江戸に幕府を開いてからそいだけずっと続いたわけヨ。初めン比(頃)ァ、お大名から下の方まで景気ァよかったろうネ。しょッぱなの吉原も新吉原も、お大名などのお武家相手ヨ。だから、夜はやらねえ。昼間だけだったそうだネ。お武家ッてのハ戦(いくさ)のための人たちだから、宵の口の暮六ツにァ屋敷ィ戻って変事に備えなきァなんねえのが決まり。そいで昼あすびしかしねえ。
 その景気のよさも、はなの高々三十年ッて言ひやすネ。それッから跡(後)ァじりひんの貧の字。こいつァ徳川家の直参だけぢァねえ。諸藩みなおなじ。わけァ上に書いた通りサ。でもそこが士だねえ。古傘貼りの内職したり、目白を育てゝ売ったり、つゝじの栽培したり、手習い指南をしたりして、なんとか保ったンだねえ。二百三十年も。あっしァ頭ァ下がるゼ。代々貧乏しか知らねえッてわけダ。そいでも武家は矜持を保たなければならねえ。貧して鈍するようぢァ武士ぢァねえッてネ。それを江戸の町ッ子たちァ身近に見てたから、武家にァ畏敬の念をはらってたッて聞きやすネ。江戸ッ子ァ意地と張りだッて言ひやすが、その気ッ風がどっから来たかッてえと、周りにたくさんゐた徳川直参の旗本だの御家人の生き方お手本になってたからでやしょう。あきんど(商人)の町の浪花とハそこが大きく違うとこなんでやしょうナ。

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コメント

 こんなご時勢だが、矜持は持ち続けたいねえ。

 ‘矜持とハ さむらいだけの ものでなし’

見上げれバお天道様を拝めンだ、心は日本晴れト行きたいねえ。

moon3仇吉姐さん江

 士(さむらい)ハ矜持、町人ハ意地と張り、これが江戸ッ子の心意気ッてえやつでやしょうねえ。 
 貧すれば鈍すなんてのハ江戸っ子の風上にァおけねくさり根性よ。十露盤でてめえの損得にいちにてんさくなんてぱち\/弾いて、どっちいころぶか算段つけてるようなやつァ、性根が心底腐ってンのさ。
 損得抜き、てめえが損しても、正しいとおもうことがありァ身ィなげだすもんヨ。江戸の町ァ公方様の旗本御家人朱と意気感じた町方で仕来りィ磨き込んできた武家魂の町サ。

 喜の字


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