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2008年10月27日 (月)

千秋楽面影歌舞伎座(せんしゅうらくなごりのかぶきざ)

 きのふ、あっしとしちァ早起きしてのお出ましヨ。もっとも江戸のむかしァしばや(芝居)見物ァ夜もまだ明けきらぬ六ツめえにぞろ\/でかけるが当りめえだから、四ツ半時ぶんに幕ゥ上がる歌舞伎座へのなんかはえへたァ言へねえ。いまの時計で言やァたかだか十一時。世間さまァお笑いヨ。歌舞伎座ハ再来年にャあ建て直しッてえ咄ィでてゐるせいか、木戸があくのを待つ客が大勢写真機構えてござる。破風屋根のこの建物の面影ェ写真に残そうッてのか、あっちでもこっちでもパチ\/ッて算段サ。いまァ時花(はやり)の無国籍ビードロ(がらす)箱の建もんに化けなきァいゝがなッてンが、大方のしんぺえヨ。
 さて、二階花道真上の席につき、見せてもらった出しもんハ初手が、恋女房染分手綱 重の井。子役の馬子がでるが、これが見もの。扮した小吉ァなか\/長丁場の台詞所作を見事にこなしやしたゼ。たゞ気になって仕方がなかったンは、その小僧さんの髷ヨ。なんで元服めえの餓鬼なのに、前髪すってンのかねェ。こいつが合点がいかねえ。
  二番手は奴道成寺。道成寺に男判があったァ、あっしァ知らなかったねェ。謡で始まるンだが、そこがよかったなァ。柄にもねへト笑われやしょうが、めえにァのべつ能見物しておりやしたンで、躰ン中にァ謡や能笛小鼓の音なんかゞ染みついてゐるでしょうねェ。〆のとこでハ能のシテは、天井から釣った大鐘が床に落ちてくる中に、下から跳び上がってへえるンで、歌舞伎もそうするンかと待っておりやしたが、ドジぃ踏みァ首の骨ェ折って死ぬこともあるそんな芸当は、さすがに町方の歌舞伎ぢァよしにしておりやしたネ。
  三番手ハあっしにとっちァけふ昼の部のいっち気がへえった二幕もんでやしたナ。魚屋宗五郎。立作者は河竹新七。筆を折ってからァ黙阿弥を名乗りやしたな。立役者の菊五郎がよござんしたねェ。女房おはまを演じた玉三郎は地味にてっしておりやすが、歩む姿なんぞにァ少し疲れた中年女のやわらけえ線がよく出ておりやしてネ、それはそれで宗五郎の引き立て役になっておりやすもんネ。宗五郎の台詞ン中に、ぼて振りだの一期半期なんてのが出てくるのがうれしいぢァござんせんかい。てんぴん棒で売り歩くのはふつうハ振り売りッて言ひやすが、魚屋だきァぼて振りッて別に呼んでおりやしたからね、江戸ン比(頃)はネ。一期半期てえのハ下女や下男なんかの下働きの奉公人は九月朔(ついたち)から三月四日までを半期、一年を通してを一期と言ふンだが、その奉公人は桂庵と呼ぶ口入屋から来るッて仕組。なんで桂庵ッて呼ぶかッてのはそれなりに理由(わけ)がありやすが、それハ長くなるンでまたッてことでネ。舞台にしつらえた居間ン中ぢァ年寄にだけ座布団がだされたンがいゝねえ。部屋の床ァもと\/板敷。畳は上敷なんだから、上敷に上敷重ねる間抜けェしねえが本式ヨ。だから躰の弱った年寄にだけ座布団が出されたが、それも客が来たら目につかねえようにすッと引っ込めた。ちゃんと判ってやってるのがいゝねェ。このぶてえ見てるうちにあっしァ、志ん生の妾馬(めかうま)思ひだしちまったゼ。
 昼の部の〆は藤娘。場内明かりッてえ明かりぜんぶ消して真ッ暗闇の始まりサ。その闇ン中から囃子が聴こえて来る。なんでいこの趣向はッて思っても、なんも見えねえ。それがまた、照明部さんは昼寝してンぢァねえかッてくれえ、なげえ真ッ暗闇ヨ。どんな按配に明るくするンだいトお手並み拝見ッてじっと辛抱してたら、突然ぱッと真昼もあざむく明るさになりやがった。なんと天井から舞台の床につくほどのとてつもねでっけえ藤の花がいく房も\/も吊り下げられてゐるぢァねえか。その艶やかなことッたらねえぜ。見せてえくれえヨ。真ン中にァあの藤娘が咲いた花のような立ってゐるのは、なんと傘寿の芝翫ヨ。それが舞台を広々と踊るのヨ。そうしちァ早変わりで衣装をなんべんも替えて見せるからてえしたもんだゼ。こんときばっかしァあっしァ芝翫柄の手拭を懐にしのばせてこなかったンを悔やんだゼ。持ってきたからッてなんとかなるッてもんぢァねえが、そこはやっぱり見せてもらうこっちのこころの持ちようが違いやしょう。
 歌舞伎座さんよゥ。こんども末代までもみんなが誇れるよふないゝ上もん、おッ建てゝおくんさいヨ。待っておりやすゼ。

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コメント

今月は夜の部だけで、昼の部までお財布も時間も手がまわりませんでした。
魚屋宗五郎を今後観る機会があつたら台詞に注意してみます。

>芝翫柄の手拭。
そのお気持ちよーーくわかります。心意気というか自分の楽しみというか・・・。

moon3風知草姐さん江

 ちか比(頃)テレビでやる時代劇ァ台詞が現代語でやすし、標準語弁でごまかしておりやすンで会話は面白くありやせんが、やっぱりそこんとかァ歌舞伎だねェ。詞屋のあっしとしちァうれしくなりやしたゼ。
 菊五郎の宗五郎がよかっただけに、くやまれることがひとつ。手拭サ。菊五郎格子のも持ってるのに、なんで懐に忍ばせていかなかったンだと。エェィこの盆暗ッてやつサ。あっしにァしばや(芝居)をもっと楽しむ工夫がたりやせんでしたゼ。

  喜の字

暗い暗い舞台の上息を詰めて立っていなさる役者
それを目を凝らして何が始まるんだと見つめる御贔屓さん、
さあさあ どうなるどうなる。
読んでる此方も、読み進めて一安心。
時々熊本の八千代座とか飯塚の小屋にいくんですよ。手を伸ばせばすぐ其処にお役者さんがいなさるような小さな小屋なんですけどね。趣向でろうそくの明かりが燈されてその昔の芝居小屋の暗さを演出しながら今の照明になるのですが、升席で拝見。お江戸の時代はこんなだったかと、思いを馳せたことでした。

菊五郎さんはやはりお上手でございましたね。玉さんもああいうのが似合う年になったのかと年月を感じました。

お若い方はね、江戸っ子より東京っ子に
なっちまいますもの。

moon3ぱら姐さん江

 ろうそくで舞台の役者さんを観るッてのこそ本もんでやしょうねェ。その薄暗がりの中で引き立つように白塗りも隈取りも工夫されたンでやしょうし、衣装のド派手さもそッからきておりやしょうからネ。あっしもいっぺんろうそく歌舞伎を観てえと思っておりやすンだがネ。

 めえに茶を少しかじりやしてネ。師匠が夜咄の茶事を催してくだすって、そんとき初めて燭台の明かりだけで濃茶を喫しやしたが、茶碗の中ァなんも見えねへッてことを知りやしたワ。なんでも実正(ほんと)に躰で感じねえと駄目なもんでやすねェ。

  喜ンの字

moon3しみちゃん姐さん江

 あっしも玉三郎も、もふあゝいふ老け役をやる歳になったンだなァと、鳥渡(ちょいと)感慨深いもんがありやしたヨ。あっしがあの方の踊りの舞台を初めて観たのは、思い返せばもふ二十年も昔。華やいだ色気がありやしたゼ。でけんど観阿弥が言ふとおりで、華にァ若さがいっち大切なんでやしょうねェ。

  喜の字

 ふふふっ、旦那の気持ちが伝わってくるようで、手拭をしのばせて来なかったのくだりでね。

 傘寿で舞台狭しと踊り早変わりとくりゃあ 手ェ叩きたくなりやすよ、ましてや懐にあったなら手ェ握ってほめているようなもンでござんしょう。

 

moon3仇吉姐さん江

 手拭で、なんか贔屓の気持ッてのが少し分かったやうな気がいたしやしたヨ。江戸の比(ころ)の娘たちァ贔屓役者の紋のへえッた紅白粉だのなんだの懐に忍ばしちァぼうッとしてたらしいからネ。
 ま、あっしァ歌舞伎でも能でも、誰か演者の贔屓になる気持ァさらさらねえ憎ッたらしい見物客なんだがネ。姐さんだからほんとう言ひやしょう。あっしァ踊りァだめなんだ。芝居の方がいゝネ。それよりいゝのは、舞だネ。能の序の舞なんか初めて観たときァ、この世にァ詞を越えるもんがあるンだと胸がうちふるえやしたゼ。ありァ神々しかったね。

 喜の字

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