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2008年10月19日 (日)

【番外】NHK土曜時代劇、道具が光ッておりやしたゼ

 ゆンべ、NHKの土曜時代劇を観ておりやしたサ。きらット光る小道具が三ツばっかし目にへえりやしたね。番組の外題はたしか、居眠り磐音(いわね)江戸双紙。陽炎の辻2とかッてあったと思ひやすヨ。
 鰻屋が舞台になってるンだが、そこの板めえさんたちがちゃんと板場に座りこんで包丁ふるってンがいゝぢァありやせんかい。江戸ン比(頃)の板めえは土間での立仕事ぢァねえ。みんな板の間に座ってやっておりやした。そいつゥこの芝居ぢァちゃんと再現してンのがうれしいねェ。こんどの場面で出てきたかどうか分からねえが、かまどだって板の間から火加減、湯加減をした。そいだもんで、かまどは板の間の高さに合わせてしつらえてあったもんでさァ。
 剣術の道場で竹刀で打ち合う場面があったが、そこで使われた竹刀もちゃんとしておりましたヨ。いま目にする竹刀は割竹を束ねて要所しか皮で留めていねえが、江戸のじでえに使われた竹刀ハ割竹をそっくり皮の筒でくるんだもんだったそうだが、それで打ち合いをするのが観てゝうれしくなりやしたねェ。いまゝでの時代劇ン中ぢァこうしたことッてのハけっこういゝ加減でやしたもんねェ。劇ァ作り話なんだが、細ッけえとこで啌(うそ)やっちまうッてえと、ぜんてえがうさんくせえものになるもんサ。だから、こうした小道具ハきちんと〆(しめ)とくことがでえじ。観てゝ心持がいゝやネ。
 きらりト光ッてゐたッてえバいっち光ってゐたンは、朱銀ヨ。こいつヲ鰻屋の出前持の小僧が釣銭に三めえ(枚)持って行くンだ。これを語りで盗まれるッてのが劇の本筋なんだが、この手の銀貨にァ一朱銀と二朱銀がある。一朱銀は文政十二(1829)年につくられたが、二朱銀それより五十年ばっかしはえへ安永元(1772)年からある。場面ン中ぢァ小僧の手のひらの上にのったそいつが写ったが、縁に粒々の玉がつながって光ってゐたから文政の一朱銀かもしれねえ。なにぶんにも一瞬写されたゞけだし、釣銭はいくらッて額は台詞はなかったから定かなこたァ分からねへ。それにしてもその銀はたくさんの人の手を渡ってきたッてすり減った光り方ァしてゝ実正(ほんとう)らしさがよく出ておりやしたゼ。もちろん本物を使ったンだろうけどネ。劇で使う造りものゝ小判のように啌臭くねえのがいゝヤ。
  たゞなんだゼ。釣銭ッて言ひやしょう。銭(せん)てのハ銭(ぜに)だ。一朱にしろ二朱にしろ銀は銭ぢァねへ。金(かね)だ。職人は銭で決済し、あきんど(商人)は銀、武家は二分金や小判といった金(かね)を使うト分けられてゐたそうでしてネ。お金(かね)ッてえのハそうした大層な代物(しろもの)だったわけヨ。そんなもん釣に、しかも鼻ッたらしの小僧に持たせるかねェ。こゝら辺(へん)に無理があらァな。こいつァきっと原作の方にそれがあるンだろうねェ。
 二朱銀なら八めえで一両に当たる。一朱銀なら十六めえだ。一両小判との間にァ二分金てえ貨幣がある。二朱銀二めえで二分金一めえ。一朱銀なら四めえで二分金一めえ。二分金四めえで金一両の十露盤(そろばん)になる。相当腕のいゝでえく(大工)でひと月に稼げるのが小判に換算して一両だッたと聞きやすからね。三朱にしろ六朱にしろ、大した金額なんだがねェ。

 大道具(おほどうぐ)も、浅草奥山の芝居小屋の外の造りがよかったねえ。丸太の柱や梁に筵(むしろ)ォ張りめぐらしてネ。江戸の比の寺の境内でやる緞帳(どんちょう)芝居はいつでもとり壊しできる、いまで言やァ架設ッてやつでしかお許しがでやせんでしたからネ。この場面、ほんの瞬きするくれえの間しか写らねえンだが、しっかと造ってありやして、こちとら観てゝうれしかったゼ。
 またこんどの土曜の夜が楽しみになりやすナ。

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コメント

〈たそがれ清兵衛〉あたりから、時代考証がしっかりするようになりましたね。昔の時代劇はけっこういいかげんだったようですが、どうも黒澤明あたりの影響らしいです。西部劇を意識して腰掛け椅子のある居酒屋が出てきたり……(笑)。

moon3ひぐちの兄哥江

 居酒屋の酒樽の椅子、すっかり定着しちまいやしたよねェ。時代考証家の林美一さんが、著作ン中で嘆いておりやすもんねェ。江戸じでえに椅子はねえし、酒樽は高直(こうじき。高嶺)なんで、空樽は酒屋の小僧が集めてまわってゐたから、腰掛なんぞにァしねへ。小道具方にかならず床几を使ふようにッて言っておくのに、いざ当日のセット見るとかならず空樽を腰掛に出してるッてネ。
 いやァ、ほんと。こんどの陽炎の辻は三十分のみじけえ番組になった代りに、道具の考証の密度が高くなってよござんすゼ。あっしァうれしい。見所がたっぷりありやすもん。

  喜ンの字

喜三二さんの江戸時代に関する知識の深さにただただ感心して読ませていただきました。

時代物を見る時には、やはり細かい知識があった方がより楽しめますよね。

当時のお金の価値や、どういう層の人がどういう種類のお金を使っていたのかも初めて知りました。

これで、時代物を見たり読んだりする時の楽しみが増えました。

ありがとうございます。

moon3ひよこ姐さん江

 おっしゃる通りだと思ひやすゼ。いろ\/知ってるト咄の筋とは別に画面の中ァ見どころ満載で気が抜けねへくれえヨ。
 水戸黄門だってなんて言ったら叱られやすが、めえにうっかり八兵衛ッて役がありやして、これが粗忽もんであんまり役にァ立たねえだが、滅法界食い意地のはった野郎でネ。いつも食べることしかかんげえてゐねえ。
 この役と役名にァちァんと理由(わけ)がありやすのサ。八兵衛とか権兵衛ッて呼び名は、江戸の町ぢァ、冬場になると信州から出稼ぎに出てくる信濃者のことを言ったもんでしてネ。冬は田畑の仕事ができねへンで、食いつなぎに江戸の大店(おほだな)なんかに出稼ぎに出てきやして、薪割りぐれへの簡単な力仕事して、跡(後)ァ喰えるだけ飯を喰って行くンですワ。その比、銀シャリが喰えるのハ江戸ぐれえのもんでしたからネ。大飯ぐれえなんだが、仕事はさっぱりできねえッてんで信濃者は知られていて、詞を詰めておしなとも呼ばれておりやしたのサ。
 そのおしなの代名詞の八兵衛が水戸黄門の一行の中の愛嬌者として登場してるッてわけダ。こりァ脚本家の先生、知ってるねえットこちとらァにんまりヨ。こんなとこもおもしろさサ。

 もっとめえの水戸黄門にァ風車(かざぐるま)の弥吉とかッて二ツ名の影の警護のもんがついておりやしたが、あの風車、あっしの当て推量だが、江戸は雑司ヶ谷の鬼子母神の名高いみやげが風車で、大人ァこれを買うと衿だの笠なんかに刺してかえるッてえ図が風流本の挿絵に出てたりいたしやすから、そんなとこから作り上げた役かなト思ふンだが、こうしたことにかんげえめぐらすのも面白さの内サ。

 姐さんも髷の髪形だの衣装だの画面の隅々まで観て楽しんでおくんなさいな。障子の桟ひとつだって、違いがありやすンでね。ま、こんなとこちくいち観てると、ドラマが何倍も面白くなりやすゼ。

  喜ンの字

「陽炎の辻2」は主演男優が目当てで見てましたが、さすが喜さま、小道具のご説明は大変タメになりました。
どうしても役者のほうばかりに目がいってしまうので
衣装やヘアスタイルはいつも興味深くみているのですが・・。
数年前の「利家とまつ」の衣装は強烈で、ほんとうにこんな衣装着てたのかな、と思う斬新なデザインでしたが、信長の奇抜さがとても出ていたと思いました。(胸のあたりに大きい円の染め模様など)
古い話ですみません。
時代劇の衣装についても、改めて解説していただけるとうれしいです。

moon3やよぶ姐さん江

 おいでなせえ。こういっちァなんなんだが、立役のあの兄さんがいっち浮いてンだねェ、これが。まずあの髷ァねえヤ。そんなこと言ったら芝居になんねえンだがネ。髪を後ろで束ね垂らすのは総髪なんだが、尻尾ゥあんなに長く馬の尻尾(ポニーテール)のようにァしねへし、前髪は後になでつけ、めえに垂らすこたァしねえ。元服すると男は前髪を落し、月代を剃り上げる。女も前髪を上げ、額を出して髷を結ふ。

 岡ッ引きッて言ふか目明かしッてのか、坊主天窓(あたま。頭)の親分がおりやしたが、町人ならかならず髷を結ってなきャなんなかった。坊主頭はその名の通り坊主と医者と按摩なんでネ。総髪はその医師と儒者ぐれえのもんでやしょう。なぜ坊主頭がこうした人には許されていたかッてえと、日本人ぢァねえッてことにしておくためなんでして。みんな死にまつわる稼業なんで、日本人には嫌われるンですワ。で、外国人ッてことにしておこうッてんで、天窓を変えてる分けなんだそうでやすゼ。

 その岡ッ引きが犯人に縄を打つのもできねえ相談。その役割は町奉行所の定町廻り同心の仕事。岡ッ引きだの目明かしだのは、同心と個人的な関係で密偵を頼まれてゐるだけのもの。お上とは関係ないものなんでしてネ。
 それが十手を持ち捕縄を腰にぶら下げて犯人逮捕にめざましい活躍をするようになったのは、岡本綺堂がシャーロック・ホームズの原作を詠み、日本でも本格的推理小説を書きてえッてんで、半七捕り物帳を作り上げたのが、そもそものかんちげえの始まりサ。
 こんなことかんげながら時代劇観てもらうトもっと面白くなると思ひやすゼ。

  喜ンの字

まぁ そういうところに気をつけて時代劇をご覧になって楽しんでいらっしゃるのですね。
作り手側もそういうファンがいてくれれば 
「おおっ!!」と嬉しくなることでしょうね。

私はことばづかいと着物の着付け、女性の化粧が気になっています。
既婚の女性が皆、眉はそのまま お歯黒もなし。
たしかにいまどきそんなことをしたら、視聴者から
「気持ち悪い化粧は止めて」と言われるかもしれませんがね。

moon3おあやのお内儀さま江

 むかしの映画はけっこうしっかりやっておりやしたよネ。眉毛を落し、お歯黒をつけて。テレビが主になったら、なんとなく軽くなっちッまってネ。
 詞もあっしァ気になりやすヨ。けふも丁度やっていて、武家のご新造が旦那さまに向かって、あなたッて言ふンだよねェ。このあなたッてのは、ちか比(頃)の時代劇でよく聞かされやすが、ありァ明治になって西洋の小説なんぞがへえって来たときの翻訳からなんぢァありやせんかねェ。耳障りでいけねェ。

  喜ンの字

喜三二様

改めて拝見いたしました。私の記憶違いで今年の春のことでした。また、江戸のお酒のお話も読ませていただきながら、忘却しお恥ずかしい限りでございます。
すでに、頭の中身は季節の先取りを致しまして冬眠状態のようでございます。どこからか、いつものことだろう、とのお言葉も聞こえてくる次第ではありますけれども。
江戸時代のことはもとより、何事についてもご造詣が深いお方と推察いたします。日々恥をさらしております私にとりましては是非とも、お爪の垢を煎じて飲ませていただきたくなりました。
これからも宜しくお願い致します。


moon3茶楽子姐さん江

 お初ですナ。お訪ねくだすって、お礼申しやすヨ。
 どなただッて、鳥渡(ちょいと)めえに読んだこたァ霞の中にへえっちまうもんですゼ。そいで残ったもんだけが、価値のあること。あっしの文もまだ\/サ。消えねえように力ァ抜かねえよふに、気ィしっかりもってこれからも書きやしょう。ご贔屓のほど、お頼みいたしやすゼ。

  喜ンの字

江戸の頃に『袋竹刀』ってえのが考案されて今でもある流派では使ってますもんね。
確かに今の剣道の竹刀を使ってるドラマもあるんで何だか変な感じで、、、。
ほんとに昔の時代劇は役者の所作がまず違ってましたね~
小道具大道具、それから照明も最近は蛍光灯の明るさの変な感じを受けます。
昔はもっと『闇』があっていいと思いますが視聴者に文句言われちまうんですかね(^^)
兄さんの文章を読ませて頂くと何だか物知りになったようで気分が良くなりやすよ。
ブラウン管に穴~開くほどこのドラマ見てやろうっと、、、。
(あれ?今のテレビにゃブラウン管は、、、)

moon3牛込の大哥(あにィ)江

 あの名めえハ袋竹刀ッてンですかい。おかげであっしもひとつ利口になりやした。物のなめえッて調べンのが難儀でして。助かりやした。
 江戸もんのドラマで、暗い画面が多めだったンは、必殺仕掛け人ぐれえまでゞやすかねェ。鬼平なんか妙に明るかったように思ひやすね。
 ま、あら捜しのようになっちまうが、時代物ッてのはそうしたとこ細々と見てッと、けっこうおもしれえンでやめられやせんナ。
 家のはブラウン管なんだが、すが目で見てるせいか、隅っこの方にちっせえ穴がちょこ\/空いちまって、絵がこぼれてきやがるヨ。

  喜ンの字

 あれからも、塩原先生ンとこ、通っておりやすヨ。お蔭さまで。

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