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2008年8月31日 (日)

【番外】川柳ひとり柳戯留(やなぎざる)(三)

  猪牙(ちょき)ッてェ吉原通いの舟ァ揺れるそうですなァ。けつ(尻)に猪牙だこができるくれえでねえと、通たァ言へねえとか。あすびの道も容易ぢァねへヤ。なんせあの流れのでっけえ大川(隅田川)を柳ばし辺(へん)から山谷堀まで飛ばしてさかのぼって行こうッてんだから、揺れてあたりめえ。左右の縁ィしっかと握って体ァおさえ、「ヨシせんど(船頭)さん、ぐい[※]ッと堀ィやっておくんなト酒手ェぎらりと光る小粒でも放りァ、跡(後)は櫓をしならせて飛ぶようヨ。なんせ吉原へちっとで早く行こうッてんで、浪きりのいゝように艫(とも)から舳先ィ猪の牙みてえにすっぱりと尖らせた造りでやすからネ。乗り心地なんてしみッたれたこと言ってねえのヨ。舟遊山ぢァねェやな。じょろ(女郎)買いの決死隊が乗って行こうッて代もんですゼ。

  猪牙に酔ひ 中宿で寝てる 初男(うぶをとこ)

 馴染みィ重ねて、遊びの色もいつしか深き濃さ。年(ねん)が明けたら[※]おまえのとこへ、きっと行くから待ってゝおくれ。それまで待ッちァいらンねへ、ほかの男に惚れるンぢァねえか。ばかァお言ひぢァないよ、あっちの心ァ主(ぬし)さんひとり、ホレこのめえも起請書いて血判押して。分かっちャゐるが明日にでも請け出されでもすりァ、おりァ死んでも死に切れねへ。今宵も念押し駄目押しに、惚れて通うは恋の闇。たっぷり流れる大川の、ありあまった水さえも、胸の炎を消しもせず、切る浪音があおるだけ。「船頭、もっと早くやれねえけえ。

  大川を 馳せのぼる 猪牙の闇

(※ぐい。急ぎ、の意。ぐい呑みなど。急ぎの仕立てをぐいづくりと言った)
(※中宿。山谷堀を上がったところに立つ船宿や引手茶屋。吉原へ入る前にいったんこゝで衣服を着替えたりした)
(※年(ねん)が明けたら。吉原のお女郎は年期奉公。十年を限度とした契約。数え二十七歳で年季が明けるのか普通。この年期奉公の期限を十年と限ったのは、人身売買を禁じるのを目的に商家や職人親方への奉公期限を法で十年と定めたことに由来する。

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コメント

何の小説だったか忘れたが、ボスボラス海峡あたりの猪牙に上官の新妻と乗らされて、危ないからって船頭にいわれて、しかたなく舟底でべったり抱きつくはめになった男の話があってね。

まあ、お決まりで、本人達の意向はともかく周りの声で仕方なく心中にまで追い込まれるんだけれども。また因縁の猪牙にのって、二人でわざとひっくり返っちまうって寸法。船頭はいい迷惑よ。

もしも遊女が一緒に乗ってくれるんなら、ひっくりけえったってかまわねえ野郎は多いだろうねえ。それこそ水も滴るいい男になれらあ。田んぼ通いに水練は欠かせねえと。

もっとも、帰りに一緒にとんずらしたい遊女は多かろうねえ。それができりゃあ、しんこ指こさえたり、鴉ぶっ殺さなくても済むんだがねえ。

moon3ねこじゃねえやいのお玉姐さん江

 外国さんは律儀で、ぶき(無器用)だねェ。 お江戸の男なら、あっさり七両二分で手ェ打ってるゼ。
 心中するくれえなら、手に手をとって粋な道行ととんづらしちまやいゝのにナ。上官のお内儀が醜女だったら心中なんか義理にもしねえだろうが、心中したとこみりァ、別嬪さんだネ。あっしなら道行えらぶゼ。
 世の中ァ見渡しァ道行してえような命取り屋の別嬪だらけだが、連れて逃げても喰わせる甲斐性がこちとらにもうねへから、じっと我慢して息ィひそめて生きてンのサ。
 しんこ細工もこっちからやんなきァいけねへのかもしれねへナ。

 喜ンの字
 

それがね、一度は手に手を取って逃げたんだよ。お互い好きってほどでもなかったのに。

で、女の方はしっかり新しい暮らしに順応してたんだけどね、男の方が、妻の手が荒れていく生活と、地味な仕事が耐えられないってんで、やけくそで金全部ぱあっと使い切って死に花咲かせて、見返して?やろうって。困った男だ。ま、それで死ななきゃ小説になんないんだけど。

ま、お江戸のほうはあっさりしてるからね、女の方が。なにしろ、男の代わりなんぞいくらでもいるから強気だよ。いい時代だったねえ(笑)

moon3ねこじゃねえやいのお玉姐さん江

 をとこッて生きもんハ莫迦だからねェ。夢ばっかしみてる。そいで三度\/おまンまが喰えると思ってる。をんなはそこ行くと今日のことォ大事にしやすからネ。まずおまんまのこと考えやすもんネ。
 江戸だったら、男はより取りみどりだったのにねエ。いゝ女は極楽だヨ。甲斐性のあるをとこ、選び直しがきいたのにねえ。

 喜ンの字

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