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2008年6月17日 (火)

【番外】ひとりね

 世に徒然草、方丈記は在るはもとより知る処なり。わけても方丈記、心深く惹きつける書なり。京日野山に住える鴨長明の如く余も山隠の日々を送らむとし、八つの山中に柴の庵を結び二十年の星霜を送る。先年思ふ処有。名残の齢を古里にて過ごさむと江戸に戻り、市隠となりて江戸ッ子の修業に日々を費やす。
 この度、ひとりねの在るを知る。柳沢淇園の書なり。本書、学舎では教えぬ書なり。徒然草を読み方丈記を繙きても未だ人生の奥義に達するとは言ひ難し。いわんや本書を読まずしてなお。
 淇園、元は曾禰氏なり。柳沢吉保の息吉里に仕え、父代に柳沢姓を許さる。淇園は号なり。坊間、柳里恭にて知らるゝ。
 宝永元年生を受くる。八九歳にて花鳥図を描き、十歳にして永慶寺の十五祖師図を画くと伝えられ、十五歳にて甲斐恵林寺羅漢図の求めに応ずる。禅学は十代にして修め、十三歳より唐音を学ぶ。十一歳にて観世新九郎に師事、鼓を学ぶ。十九歳比には篆刻に才を発揮する。
 ひとたび関心を抱けば、その求め浅からぬものがあり、すべからく徹底し耽溺し探求す。雅から俗へ、机論から行動へ。至らぬ処なく、精神の放蕩から行いの放蕩に達し、折花攀柳の巷に到り、とりわけ吉原には通暁せり。本書ひとりね、淇園二十一歳の著述なり。墨跡を辿るとき、記されし洞察若輩の残せりものと誰が思ふや。儒学、漢詩文、唐音、仏学、書、画、篆刻、鼓、三味線、河東節、色道、俳諧、香道、武芸諸技。二十前にしてすでに人の師たるに足れる芸十六に及ぶと近世畸人伝に見ゆる。恐るべき才人なり。
 余、淇園の三に倍する歳月を浪費し、足下影跡に及ばず。やんぬるかな。遅ればせながら学ばむとして夕べに紙魚を追い朝に墨滴を辿る。嗚呼歳月人を待たず。光陰矢の如し。星霜流星の如し。残夢消え逝くのみ。

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コメント

立派な札付きのナマケモノですが、それでも蛍の季節になると佐々木信綱作詞の「夏は来ぬ」の三番の歌詞を思い出します。

橘の薫る 軒端に
窓近く 蛍飛び交い
おこたりいさむる 夏は来ぬ♪

寿命が短いころには早熟だったのでしょうか。柳沢淇園氏は、おそらく蛍の光に書物を繙いたのでしょうね。頭下がりますぅ。

酔っ払ったまま失礼しまぁす


  あたいの人生の手本は 残夢消え行くのみ、「飛ぶ鳥あとを濁さず」 ですよ★
 此れは兄貴の徒然草 ですナ!

たまにゃこういう文体もいいですねぇ…

夕べに紙魚を追い朝に墨滴を辿る
って素敵やわあ。

なんや、その「ひとりね」の随筆読んでみたくなりました。って、調べてたら『「悪所」の民俗誌――色町・芝居町のトポロジー』なんてぇ本もでてきて、また脱線脱線。

moon3風知草の姐さん江

 きっと眠る奴の気がしれねえッてお人だったでやしょうねェ。勉学も修業も、このお方にとっちァみんな楽しい遊びごど。こうでなくちァいけやせんナ。
 そいでいて、いつも心は冷静。色の道にあすんでも、そこであすんでる自分を上から観てゐるッて感じで決して溺れたりァしねへ。

 喜ンの字

moon3ひとみうぢ姐さん江

 文体、おほめくだすってありがたふ。書き甲斐がありやすゼ。

 消ゆるものに思ひ残すべからずッてのが、肝心ですナ。所詮人間消え逝くものなりなんでやすから。

 喜ンの字

moon3Hiroko姐さん江

鳥渡(ちょいと)した名調子でやしょう。へへへェダ。

ぜひお読みなせえ。勉強になりやすゼ。ある意味でをんなのあるべき姿が分かりやす。

悪所ほど人の心を惹くとこァありやせん。なんせ人間、好ましからぬ行いにより生を受くるものですからナ。

喜ンの字

買おてみよとおもたら、55万円〜とかいう古書がでてまいりました。大学の旧図書館に完本見つけましたんで、こんどあたしも「紙魚を追い」にいってまいります〜♪

旧図書館は古くて怖い雰囲気で、「夕べ」にはいきとぉない場所なんで、お昼間にいってまいります。

moon3Hiroko姐さん江

いやァその五十五万円、散財してえな。そいであっしに五万で払い下げておくんな。いゝ功徳になりやすゼ。来世は仕合せ間違いなしだヨ。

 学校にお化けァつきもん。まして古い図書館なんてうってつけでやすナ。ご無事でおかえりなさいましヨ。

 喜ンの字

すごい人がいたんですねぇ。
世の中知らないことだらけですが、
ひとつ新しいことを知るとうれしくなります。

折花攀柳・・・この言葉も恥ずかしながら
存じませんでした。
なるほど、花柳街で遊ぶことをこう言うのですか。
勉強させて頂きました。

授業料、どうしましょう。

moon3おあやのお内儀さま江

 お勉強になりやしょう。知ってもなんの役にも立たねえことばッかしでやすが。
 お月謝、おたこうござんすゼ。

 喜ンの字

>授業料、どうしましょう。

じゃ、マダムも授業料として五十五万円の古書に散財して、喜三二はんへ払い下げて、来世の功徳を積むっと♪

ありがたやありがたや〜。

moon3Hiroko姐さん江

こいつァありがてえ。あっしァ果報もんだゼ。
そいで、罪滅ぼしに観音さんに代参して、贋銀いちめえ放り込んで来世をお頼みしてあげやしょう。南無ゥとネ。お安い御用ダ。

ありがた屋 喜ンの字

あわわわわわわ・・・・
ごごごごごごじゅうごまんえん!!!

喜三二さま
そりゃあんまりな・・・・(泣)

moon3おあやのお内儀さま江

 なに\/畏れてはいけません。お布施は多いほどご利益がございます。なんまんだぶ、なんまんだぶ、だぶだぶ……。

 喜ンの字上人

そりゃ あんまりかぁ だんまりかぁ~笑

馬関芸者は志士を恋て言うそうな

おとこなら 三千世界の鬼殺し 
        主と朝寝がして見たい

やんぬるかな。遅ればせながらナニを学ばむとして夕べに紙魚を追い朝に墨滴を・・

なさるのかしら?ははは すかんたこ。

moon3ぱら姐さん江

 なにィ学ぶッてかい。そいつァ決まっておりやしょう。あの道ヨ。他の道ァだいたい察しがついておやすヨ。あの道だきァお先が深過ぎて真っ暗。風にゆらゆら小田原提燈ぶら下げて、暮六ツから紙魚を追い、あした(朝)は未だ暗き明六ツより見えぬ目ェこすり\/墨滴を辿るッて老苦学生サ。

 探究心に終わりなし 嗚呼苦学なり 贋勉学士 喜ンの字
 

 

 

 居なさるンですねえ才ある御仁が。
しかもその若さでをんなヲ語るなンざア・・・

 あっぱれ!

 あたしハてめえですら解ンねェ、
 “況や他人様をや”でやすよ。

moon3仇吉姐さん江

 いなさるンだよねェ。てめえなんぞの青にッて思ふトすっかりこの世をお見通しのご仁がネ。ト思ふといゝ歳こいてゝなんにも見へねえのもごっつうおりやして。世の中善くも悪くも油断できねへ。

 おゝ強飯の 喜ンの字 

あたしゃ学ぶ方は三日坊主もいいとこ。一応見えるとこに置いときゃあいつか手が伸びるだろうって魂胆で、ただでさえ堅え本が、日向に積んどくになってますます乾燥の度を深める始末。

おかげで紙魚ア涼しいうちのだいどこに勝手に避難してやがるんでさ。

だけどありゃあ、元はといえば台所でおこぼれに預かってた口らしいね。

今の紙にゃ、ご飯粒ののりなんざ使ってないだろうに、食いこぼしでもあるんかねえ、今時の草紙屋で見かけたときゃおでれえたぜ。

moon3ねこじゃねえやいのお玉姐さん江

 紙魚の干乾しィ出来ておりやすかい。月の光で干しァ一夜干しッてネ。
 だが、この本は姐さんにおすすめだゼ。やわらけえッたらありァしねへ。がっこ(学校)でおせえらンねへくれえ柔らかいンだ。お絵描きの授業でもねえのに色の道ィおせえておくれだ
ゼ。そっから見た人の世は、奥ァふこうござんしたヨ。

 いまだ勉学の足りぬ 喜ンの字
 

やあらかくって色がきれいに出てますかえ?羽二重みてえだね。

そいじゃあちいっと探してみましょうかねえ。

国会の文庫に行きゃあ置いてあるだろうが、本物じゃあ読めやしねえ。岩波辺りで出てますかい?


ところで、無学のあっしゃ昨日初めて、真綿布団ってなあ絹で出来てるってのをこの目で見ちまいました。

手間ひまかけて、一組140万円なり。こんなのを5枚も重ねてポンと女に貢いじまうってなあ、昔のお大尽は豪勢でやんしたね。

moon3ねこじゃねえやいのお玉姐さん江

 色好みの色がいゝ塩梅にでておりやすヨ。やわらかくッてネ。真綿の布団に寝るがごとしッてネ。あの真綿の布団ッてのが、掛け心地が色ッぽいンだよねェ。掛けやしょう。するッてえと、一呼吸おいて上からふんわりと下りて来るよふな感じで、それからゆっくり躰の両脇を横からふわッと寄り添うよふに包んで来るのヨ。これもお蚕ぐるみッてやつかね。この辺(へん)が心地よさがお値打ちなんだろうねェ。
 デ姐さんだけにおせえよふ。岩波は岩波でも、日本古典文学大系の近世随想集にへえってるゼ。けっこう古い板行だゼ。

 喜ンの字

おっ、近世随筆集だね、ありがとうございます。
まさか、55万もしねえだろうね、念のため。


日本古典文学大系の浮世風呂は、神保町で大枚200円で買い求めたが、またあすこに行ってみるかな。

moon3ねこじゃねえやいのお玉姐さん江

 しんぺえねえヨ。水茶屋で出涸らしに菓子つけたくれえの値段ぢァねへかな。
 あっしが持ってるのゝ奥付見るッてえと昭和四十年の板行だから、けっこう古い。だから、ちょいと探した方がいゝかもしれねえネ。

 喜ンの字
 

いや〜まったく惚れ惚れする名調子でござんすねえ〜
勉強になりやす!!

柳沢淇園ってえお人は『雅から俗』へ行きつ戻りつされて面白い人生だったでしょうねえ〜
金と時間があったらあっしにも出来るもんでしょうねかえ、、、(^^;)
あ〜あやかりてえ、、、。

しかしおいくつまで生きられたンでしょうか?
あんまり早く悟っちゃうと短命なんてえ風に思いがちで、、、。

moon3牛込の兄ィ江

 おほめにあずかって、光栄だヨ。
 享年、書き落としておりやしたねェ。宝暦八年秋、没しておりやす。齢五十五歳。あん比(頃)としちァ、可もなく不可もなくッて歳でやしょう。
 早くして達した人生ッてのは、その後が永かったのか、そいとも濃密のまゝ高めていけて短かったのか。どうなんですかねェ。凡人のあっしにァその辺がちょいと分からねえネ。

 喜ンの字

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