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2008年5月13日 (火)

新仲勇錺職(あさくさいさみのかざりしょくにん)

 雷門くゞり、人の波に押されながら仲見世を、半ばで鳥渡(ちょいと)遠いが観音さんに目配せで挨拶し、ついッと脇の新仲へ。こゝも変わらぬ人の波。いつきても浅草ァほど人の寄るとこァねえンぢァありやせんかねェ。呉服や、扇子や、下駄やに食べ物や、あれやこれやの見世が並ぶ中、一軒ぽつんと戸ォ下ろしたそのめえ(前)に、露店の商い。周りの賑わいそこだけ空いた間(ま)がけえって目立って立ち止まり、覗き込みァ小机の上に並べた細工物。脇の電燈に光ってゐる。その机の縁の小さな万力に金(かね)の板ァ挟み、一心腐乱に糸鋸で切る男は藍染丼腹掛けの見ての通りの職人姿。「ちょいと兄さん、見せてもらうよト屈み込んで覗き込みァ、並べた品は板金ァみんな銀ヨ。その長四角の板に文字やら鳥の翼だのが切り抜かれ、キラ\/やわらかく輝く美しさ。こっちの挨拶に上げた面ァきりッと締まった勇(いさみ)顔。こいつァいゝ仕事しゃしょうねェ。「こりァ銀だネ。「へい、ご注文でお名前だのゝ文字を切り抜いておりやしてト値を言ったが、その価は四千円(しせんえん)で釣がくるンぢァねえかといった控え目値段。出来合い買うのと誂えぢァ、愛着がまったく違うッてものヨ。「あっしァ錺(かざり)ッてェこの文字が好きでしてねェ。そいで名乗っておりやすのサと出された名刺にァ錺屋の屋号。なめえ(名前)の横にァ職人の肩書。意気地が知れるねェ。「前は浅草におりやしたんだが、いま栃木からこゝに通って来ておりやしてト毎週木曜、この高久人形店の横の見世めえを借りて、出してゐるンだそうで。「頼まれてネ、烟管だの簪(かんざし)も造りやしたヨ。ト聞きァあっしも黙ッちァいられねへ。さっそく取り出す女持(めもち)の銀延べ。「烟管をお作りかい、あっしのこいつァどうだい、お気に入りの自慢もんなんだがネ。ト手渡すと、「こいつァすっきりしてよござんすねェ。でもあっしならこの胴に銀の板で龍を切り抜き貼り付けやすねェ。なるほど、そいつもかっこ(格好)がいゝ。「へぇ旦那、その脇に下げてるもんはなんですかい。ト腰に下げた印傳の小箱をめざとくめッける(見つける)。「こいつァ懐電話入れサ。気に入った根付が手にへえったンで、誂えてもらったもんだ、見るかい。ト帯からひッこ抜く。こいつの売りは誂えの小箱よりも根付だが、このわけえ(若い)職人はそいつをちゃんと見抜いて根付を眺め廻し、「こりァいゝ顔に彫れておりやすねェト微笑む。そうヨ、人を彫ったものハ顔が命。髷のぢゞいが杖を突き、片手に数珠を下げて微笑んでゐる。こいつァまったくあっしの姿ァ彫ったようなもん。杖を頼りのぢゞいが、おんなじ杖にすがるぢゞいの根付を帯に付け、町ィ歩くハお笑いの洒落。どうだいおもしれへ(面白い)だろふト顔を見合せ笑ったひとゝき。
 浅草行ったら、新仲の錺職人の露店、錺屋を覗いてごらんなせえ。気にいったら名前の一文字なり彫ってもらやァいゝ根付になりやすゼ。赤い帯の脇にそいつゥぶら下げてカラコロ歩きァ人も振り向くきゃん(侠)にならァな。

附(つけた)り
てづくり工房「錺屋(かざりや)」携帯090-8513-8747  出店先・浅草新仲見世「高久人形店」横にて毎週木曜日。

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コメント

ひかえめ、柔らかな光り放つのは銀。

いぶし銀の魅力っていうと、かのヘンリー・フォンダか喜三二か。 生きたぶんだけ輝いてくる。いえいえ、へつらいなんぞじゃありません。
花のお江戸でのちょいとした、思いがけないいい出会い。 情景目に浮かぶごとき筆さばきです。
はいはい木曜日、覚えておきます、会えるかな、銀細工の職人さんにいつか―。

ところで栃木は新宿からJRでまっすぐ、随分と近くなっているのですね~日帰り圏だ。

その職人の細工物も見たいし
 オツな兄貴の根付も見たい・・・

銀はあたいも相性がよくて、
 桜の枝のかんざしはお気に入りです★
静かな冷たい、月を思わす光り方が好きなんですよねぇ。
 
がやがやした店達の中にぽつんと空いたその間は、
話の解る者同士のための空間なのですナ 

あらら、知りませんでしたわ、木曜日ですね。錺職人って本の中の言葉かと思っていたら、区議会で落選しちゃった某男性、
職業が錺職だったのでした。

家までのぞけないのですが五月人形なんかのおかざりをつくっているような雰囲気でした。>怪しい私です。coldsweats02

あら、すてきなこと。
毎週木曜日ですね。
こんど行ってみます。

で、喜三二さまの印伝の懐電話入れと、
根付も拝見いたしたく・・・
このブログには写真はダメなのでしょうか?

おふたりのやりとりが見えるようです。まっとうな仕事が分かる喜三二さんに会えて、その錺職人さんもきっとよい気分でしたでしょうね。

同じ町を歩いてもわたしは目がいかなかったと思います。木曜日ですね。平日は難しいけど、なにかのついではできるものです。行ってみます。
いいお話ありがとうございました。

moon3ミーシャ姐さん江

 ぜひ覗いてやっておくんねへ。真ッ正面から自分の仕事に取ッ組んでる職人さんとあっしァ見ましたゼ。咄ィしていて心持ちがよかったねェ。いまどき珍しい気分のいゝ男だゼ。

あっしの駄文もお褒めくだすって、お礼申しやすゼ。情景が目に浮かぶようッてのは最上級の褒め詞ヨ。うれしいねェ。ありがとヨ。


 喜ンの字

moon3マリアの介姐さん江

 ほんに銀ハあっしもいっち好きさネ。姐さんの、月の光だからッて詞で納得がいきやしたヨ。そうなんだねェ。それであっしもずっと銀好みだったんだトね。てめえのものながら銀延べの烟管も、ほんに好きで惚れ惚れしやすもんねェ。あの柔らかい光がねェ。

 姐さんの簪、差してッて木曜の職人さんに見せてやっておくんな。きっと喜ぶゼ。頼んだヨ。いゝ物は腕の肥しになりやすからネ。

 喜ンの字

moon3しみちゃんの姐さん江

 姐さんはすぐ近くでやしょう。ぜひ、立ち寄ってやっておくんなさいな。あっしァわけえお人が自分の仕事に真ッつぐ取り組んでンの見ると堪らなく嬉しいのヨ。応援してやっておくなさいナ。頼みましたヨ。

 喜ンの字

moon3おあやのお内儀さま江

 そう、木曜でやすヨ。新仲見世、真ン中辺(へん)だったかなァ。ウン確か浅草公会堂のあるオレンジ通りに出るちょい前だったね。仲見世から行って左側だから、すぐ分かりやすよ。

 あっしの根付と印傳の懐電話入れねェ。じつァこれ二組あるンだ。ぢゞいと山がつ。印傳は白と黒。
 ちけえ内に写真撮って載せやしょうかねェ。どっちの根付も顔がいゝヨ。宝もんヨ。
 これらにァ物語がありやしてねェ。その咄を書いて載せやしょうかネ。

 喜ンの字

moon3風知草の姐さん江

 まっとうな仕事。いゝ詞だねェ。あっしァこの詞も大好きだが、こういう詞をおつかいになるお人も大好きヨ。いまァ銭金のことばっかしで、人や世間をだまくらかしても稼いだ奴がえれへなんてェじでえ(時代)だからねェ。嬉しいぢァありやせんかい。仕事ッてのハお金目当てにするもんぢァありやせんもんネ。真ッちょうじきにとッ組んでいりァ、お金は跡(後)からついてくるもんでやすもんねェ。
 折があったら、ぜひ覗いてやっておくんな。
人が立ち止まるだけでも、応援でやすンでネ。気にいったら、ちょいと高めの昼飯ィ喰った気で、誂えてくれたらもっと応援になりやすンですが。

 喜ンの字

 嬉しい文ヲありがとうござんす。

 親から子えト受け継がれてゆく愛用品、使ってこそ生きる品々、大切に育む伝統の技がまだ庶民の手の内に残っていた、嬉しいかぎりぢゃござんせんか。

 東京ハお江戸、時代の嵐の前にともし火ヲ守っていなさるお人のことヲ旦那ハ見逃さねえで皆さんに伝え広めて本物ってやつヲ教えてくださる。

 これからもお頼み申しますよ。

moon3仇吉姐さん江

 そうだよねえ。親が使って子が引き継ぐ。そのまた子が使う。文化なんてかたッ苦しい詞ァ使わなくたって、昔ァみんなそうしてきたのにねェ。戦後ッからかね、ご維新からかね。欧米からへえって来たもんがいゝもんなんだ、新しいもんがいゝもんなんだッてネ。
 もすこし腰ィ落ち着けて、昔の人のやってたこと見直さねえと罰ィ当りやすもんねェ。

 喜ンの字

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