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2008年5月12日 (月)

正蔵華落語(しゃうぞうはなのわげい)

 ぶくろ[※]の演芸場で二へん正蔵の噺ィ聞きやして、二遍ともこいつァなんだぜッて目から鱗でぞっこんになりやして、あっしにしちァ初めての追ッかけの真似ッこでもしてみッかト、こないだの四日に上野鈴本へ乗り込みやしたのヨ。日付ァあっしのことだから天保暦だゼ。いまのお方にァ西洋ローマのグレゴリオ暦の方が馴染みでやしょうから、そっちで言ふと5月8日木曜。鈴本新緑席と銘打ってこないだの10日まで正蔵が昼のトリを勤めておりやしたもんでね、行ったッてわけヨ。
  さすがに鈴本だねェ。こゝの席亭さんが、こぶ平ッて言ったかねめえの名ァ、そいつにァ正蔵の名跡継がせてもいゝンぢァねえかと、こいつにァそんだけの力があるはずッて見抜いたンだッてね。えれへもんだゼ。
  咄ァ変わるが、途中で鈴々舎馬風が高座に上がりやしたのヨ。鳥渡(ちょいと)不思議な縁だなァと思ひやしたゼ、あっしァ。馬風の高座ァ観るのハこれがたったの二度目。いっぺん目と今度との間にァ十六年の歳月が流れておりやすンだが、いッぺん目ンときにあっしァ馬風に助けられたやふな気ィしておりやすのヨ。その比(頃)のあっしァ柄にもなくへばるくれえ働いてたと思ひねえ。そいでもってゝめえでも分かるのヨ。にこりともしねへンだ。いッつも苦虫噛みつぶしてンのヨ。さすがにこれぢァいけねへなと気づきやして、とにかく笑いに行くべえト鈴本へ行ったわサ。時刻も適当、途中からへえッたら、馬風が高座で手拍子打ってンのヨ。そいで客にも一緒にやれッて言ってやがる。なァに莫迦な真似しやがってトあっしァ中ッぱら(腹)になったンだが、おッとけふ(今日)は笑いに来たんだッてんで、あっしも莫迦になって一緒に手拍子打ってたら、なんか楽しくなって来てねえ。その跡(後)苦虫の付もんが落ちやしたのヨ。馬風さんよう、ありがとヨ。で、不思議な縁ッてのはじつァ最初ンときとこんどとが、思えばあっしァおんなじ着物で来てンのヨ。衣更の四月一日ァ西洋暦の5月5日だったから、単の結城ヨ。縦糸緯糸ともに手紬、薄手でふんわりしてゐてあっしのお気に入りサ。間に十六年の時ィおいて、たった二遍なのに二度ともおんなじ着物で高座ァ聴くッてのは、こりァ縁だゼ。そう思わねえかい。
 で、咄ァ正蔵ヨ。途中に上手い芸人が幾たりも高座に上がるわなァ。さすがに鈴本、素人のあっしが観てもこいつァ下手ッてのハでねえ。でるのは上手ばかりだが、その上手にもいろ\/あって、上もありァ下もある。見たり聴いたりしてゝ半ばでふッとまだこのお人の芸はつゞくのかなァト鳥渡辛さァ覚えるときがありやすのサ。そうしたいゝもわりいもひっくるめて、たくさんの芸人さんの跡、はなッからかずえて(数えて)二刻も跡に、やっとトリの正蔵サ。こっちもいゝ加減へばってる。ところがだゼ。正蔵が枕ァ振って、すいッと本題にへえった比にァこっちもすッと引き込まれてる。この椅子に二刻の余も腰掛けてた疲れなんぞすっかり忘れてサ。そいではッと気づくとめえの時めてえに、高座の正蔵の後の板戸が消えてゐるのヨ。周りァこっちの目にァへえっていねえッてわけだ。めえてる(見えてる)もんは正蔵だけ。吸い込まれておりやすのヨ。こりァ力だねェ。芸磨いてゞきるもんぢァねへトあっしァ思ふヨ。生れもったもんでやしょう。華ッてのはこれかト思ひやしたネ。なんたってけふの正蔵の落語ハこのめえも聴いたもんなんだ。そいでもこっちィ惹きつけやがる。その噺知ってるヨ、先ァこうなるよッて分かっていても、引きこまれてンだ。あっしァ正蔵の高座、こいで三遍目。吉原で言やァ馴染みヨ。箸袋[※]に喜三二様ッて書いてもれえてえくれえの、勝手馴染みにあっしァなりやしたヨ。贔屓するから、これからも華ァ輝かしておくんな。頼りにしてるゼ。

附(つけた)り
[※]ぶくろ。池袋の短略語。東京語か。
[※]箸袋。吉原では初会、裏、三度目の登楼で初めて馴染みとなって花魁に認めてもらえた。馴染みになると名前を書いた客専用の箸袋が用意された。

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コメント

喜三二さま
また、随分と正蔵に惚れこまれましたわね。
私、どうもこぶ平のイメージが抜けませんん。
それにあの一門の印象や、
おかみさんの印象が邪魔して
彼の落語を聞いてみようという気持ちがなかなかわきません。
でも喜三二さまがここまで惚れこんでいらっしゃるのなら、
今度鈴本にでも足を運ぶといたしましょう。

でも、馬風師匠の言葉にのって客席で手拍子を打っていらっしゃる
喜三二さまの姿、ほほえましく想像しております。
そんな一面おありなんですわね。
≪ふん、そんなガキみたいな真似、できるかいっ!≫
とそっぽを向かれるのかと・・・相済みません。


>さすがに鈴本、素人のあっしが観てもこいつァ下手ッてのハでねえ。でるのは上手ばかりだが、その上手に、、、<

其の点、浅草演芸場は上手いんだか下手なんだか、何だかよくわからないお方が出ますな(下手なんでしょうけど)(^^)
あまりの下手さに『面白い〜!』なんて酔狂な趣向もなかなかいいもんで、、。

正蔵の襲名披露ん時、見に行ってましたんです(^^)
こぶ平から正蔵に変わるってんで、自他共に相当『鼓舞』されたようで、気合いが入っておりやした。

喜三二あにさんと鈴々舎馬風との御対面、感慨深いもんでございますね〜。
ちなみに『かみの家、しもの家、両お家家』とか言ってませんでした?

落語はバカバカしくて良いですな〜
社会のアウトローが活き活きしてる世界だと思いやす(^^)


その馬風さんとのめぐり逢い。
映画にしたいような偶然が重なってますね。
不思議な巡り合わせだわ。

これでどちらかがデボラ・カー並みの美女だったら、本当に映画のような。。。

moon3おあやのお内儀さま江

 あの一門と、あのでしゃばりおッかさんにァ辟易ヨ。でもそのでえッきれえッて心持ちをいっぺんで越えちまうもんを正蔵は持ってゐたよふにあっしァ思ひやしたヨ。最初の出会が、たま\/演芸場へへえったら出てきたんで、もしも席へゝえるめえに正蔵が出ることが分かっていたら、きっとあっしァきびすを返しておやしたでしょうねェ。
 お内儀さまもいっぺん聴いてみておくんねへ。いゝと思ったのハもしかしたら、あっしだけかも知れねへから。 

 馬風ハほんと最初、むかッときやしたよネ。でも考えりァあっしは笑いに来てたんだッてネ。素直に身を任せることもでえじだッてネ。いゝ経験ヨ。

 喜ンの字

moon3牛込の貴公子さん江

 読んでて腹ァ抱えて笑っちまいやしたヨ。ほんに落語はバカ\/しいのがいゝやねェ。だからあっしァ、志ん生がやるあくび指南がでえ好きなんでやすヨ。あるわけねえのにありそうな咄で、そいでいて莫迦\/しい。頭山まで咄が行くと啌が過ぎて莫迦にするなッて気になッちまう。啌と実正(ほんと)のあわいでやるのが、いっちよござんすねェ。腹から笑えやすもんねェ。

 喜ンの字

moon3Hiroko姐さん江

 馬風の顔からデボラ・カーへ飛ぶッてのがすげえヨ。ロンパリの馬風のあの顔を思ひだしちまったもの。
 でも妙な出会でやしょう。ことしのあっしァ出会づいてゐるから、これもその一つなのかねェ。馬風にァ感謝はしてるが、でもなァ。高座以外ぢァ出会たくねへなァ。

 喜三二

 

しばらくにござんす!

ホントは鈴本の正蔵に行こうと思ってたんですが、
 ちょいと時間の兼ね合いで 末広の歌丸&小遊三へ行っちゃったんで。
 日が上席最後だったので迷いましたけど・・・
   次回は正蔵追っかけていきますよ。

馴染みになっちまいましたね兄貴★
 あたいは柳家小三治さんもすきですよぅ。    

moon3マリアの介姐さん江

 歌丸、小遊三、ともにちゃんと高座で噺ィ聴いたことねへから、いっぺん聴かなけれりャいけやせんねェ。云々するのは、その上での咄だネ。正蔵聴いてから、ほんにそういうもんだと思ひやしたヨ。
 小三治ァ好きだねェ。ト言っても、あっしが頭に描いてる小三治が、姐さんの言ってる小三治なのかどうか分からねへ。なんてッたってあっしァ山暮らしがながかったンで、いま浦島みてえなもんサ。ちか比(頃)のこたァまるっきりヨ。

 喜ンの字

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