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2008年4月 6日 (日)

春宵伍六賛(よひのはるごろくのさん)

 まだ鳥渡(ちょいと)風の冷てへ比(ころ。頃)のこと。こゝンとこぞっこんの酒ェ買いに銀座ァ八丁目の金春通まで伸(の)しやしてネ。けえって食べる[※1]ことォ思やァつい脂さがッちまって、瓶の重さも苦にならず、ドッコトドッコトはァ都々逸ァご順ださっさとおやりヨなんて鼻唄まじりの春気分。鳩居堂の見世先ィ香(こう)の香(か)たゞ聞きで通り抜け、御公儀辻番所[※2]のめへ、昔なら尾張さまのお屋敷のあった処にァ、いまァ西洋水茶屋[※3]が張ッてゐて、そいつが掛け茶屋みてえに軒の下に西洋床几ィ出し、通りがかりのお方々がちょっと一服ッてェ趣向にしておりやして。
 さて、そのまゝまッつぐ(真っ直ぐ)一丁目、それとも左ィ数寄屋川岸[※4]、織田ハ有楽さまの元のお屋敷の方[※5]ィ折れ、一本手前を弥左エ門町、新肴町、弓町の間ァ抜け、人影少ねへ脇道[※6]を歩むも春の夕にァ乙粋かト迷って立ち止まり、ふと目ェ脇ィやるト、おや見覚えの横顔。こいつァ驚き桃の木山椒の木。もしや船遊山[※7]肝煎(きもいり[※8])の、お内儀さまぢャありやせんかい。思ひ起こせば去年の夏のわずらい[※9]に、ぢァなかった夏のお遊びに、また二月(ふたつき)めへの師走[※10]の船遊山にも、音頭取ってくだすった恩義ある世話人さん。こいつァ知らん顔の半兵衛で通り抜けちァ義理がすたろふッてもの。ほんにかいトまい(まへ)ィ廻ってご尊顔。オヽこなたは紛うことなきお内儀さま。ともに見合わす顔と顔。これはお懐かしゅうございます。手に手を取ってよゝと泣き伏し、ッてえこたァねへが、互いにびっくりヨ。縁は不思議でござんすねェ。銀座で出会うも一度ならずもこいつァ二度目、手繰る縁の糸車。この世は狭いものと聞いちァゐたが銀座はもっと狭い盛り場の、そのまた臍の四五の辻[※11]。こゝで出会ったのも他生の縁、こちらのお連れァご一緒の、ミクシィ仲間のろ文字姐さんトお着物姿のお内儀風情のお方にお引き合せ。こいつァお初にお目にかゝりやす、あっしァ喜の字ッてえしがねえぢゞい、おんなじミクシィ仲とお聞きすりァ他人のような気がしねえ、どうぞよろしゅうお頼みいたしやしょう。てなことにあいなって、三人で囲む洋茶の席。しばしの歓談、暮れゆく空の服部和光に越後屋三越銀座の出店。
 秋にふるさと江戸へ舞い戻り、それから奇縁の花ひらき、思ひがけねへ人とのばったり出会、指ィ折ってかずえ(数え)りァこのお方々とで、五方六方目(いつかたむかため)。これからどんなご縁の道筋、花がひらくかいのちの旅。出たとこ勝負の一回限り。歩むいのちの行く末は、仕上げは隆々(りうりう[※12])御覧(ごろう)じろト胸がはれりァご喝采サ。

附(つけた)り
[※1]食べる。江戸の頃、酒は飲むと言わず、食べると表現することが多かった。
[※2]御公儀辻番所。かつて武家地に大名の負担で置かれたのが辻番所。町方は自身番。現在のは警察の交番なのでご公儀と洒落た。
[※3]西洋水茶屋。珈琲の喫茶店を洒落た。
[※4]数寄屋川岸。昭和の中頃までは運河があり数寄屋橋が掛かっていたが、現在は埋立られ高速道路が高架で通り、下に西銀座デパートなどが入っている。江戸時代、橋を渡ると数寄屋橋御門があり、南の町奉行所があった。北の町奉行所は呉服橋を渡った処にあった。
[※5]織田ハ有楽さまの元のお屋敷の方。江戸初期、織田有楽斉の屋敷があったと言われている。
[※6]脇道。この脇道は、現在は並木通りとなっている。
[※7]船遊山。江戸時代、船遊びをこう呼んだ。
[※8]肝煎(きもいり)。世話役。
[※9]去年の夏のわずらい。「去年の秋の患いにいっそ死んで終うたら(酒屋)」をもじった。
[※10]二月(ふたつき)めへの師走。天保暦(旧暦。太陰太陽暦)での計算。
[※11]四五の辻。銀座四丁目と五丁目の四つ辻、の意。
[※12]隆々(りうりう)。りゅうりゅう。見た目が立派なこと。滑稽本「四十八癖」三「黒縮緬の羽織でりうりうしてゐる」。

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コメント

喜三二さん、このところ素敵な偶然の出会いが重なってありますね。happy01

出会い、他人との縁、大事にしたいものです。

桜の花の下でお酒食べて
盃にハラハラと花びらが入りゃぁ
こりゃもう夢心地。。。
そんな光景を妄想する私。

桜を愛でる木の下では
桜が縁する 
一期一会の出会いが粋ですねぇ♪

moon3ひよこ姐さん江

 ほんにサ。ことしァこえへくれえだゼ。
 これから先、どんなばったりが待ってるンでやしょうねェ。

 お先どっきり 喜の字  

moon3たいたい姐さん江

 散り始めた桜の花の下でネ。
 野原に古木一本。緋毛氈敷いて、お重を広げ、漆塗りの瓢なんかゝら朱塗りの酒杯に江戸元禄の酒なんぞ注いで、さて口元へッてとき、はらはらと花びらひと片なんて、絵になりやすねェ。
 そんな花見ィいっぺんしてみたかったが、どこも呑兵衛の馬廉さわぎ。野暮ッたらねへや。
 残念だねェ。

 喜の字
 

ホントにびっくりいたしましたわね、あのときは。
女二人でとりとめもないお話をしておりましたら、
目の前に見慣れた喜三二さまのお顔が・・・
夢かと思いましたわ。
だって一度すでに銀座でお目にかかっているのですものね。
二度あることは三度あるとやら、
次はいつ銀座でお目にかかれるのでしょう。
今から心待ちにしております。

moon3おあやのお内儀さま江

 ほんにお江戸は狭い世間サ。あっしも間抜け面して歩いちぁいられねえッて悟りやしたゼ。
 しっかり苦み走っていなくちァなりやせん。

 なんだか、疲れそうだなァ。

 どっきりに弱い 喜の字

旦那の後ろにャあ凄いお方がついておいでじゃござんせんかい。
 呼べば応える木霊の様に出回るたンびにおめもじ叶うたァ神憑り

 出会い頭ハ親の仇か借金取りか逃げれば追うのハ人の常。
 待ってた喜多さんほい来た弥次さん、けふもお江戸ハ珍道中 

 次なるお方ハどちら様

moon3仇吉姐さん江

 着いてるかも知れねへなァ。こんなにひょっこり人と出会うとねェ。出会の神とでもいう神さんがゐらっしゃるのかもしれねへ。
 親の仇かどうかはしらねへが、金と女が仇のこの世ッて言ひやすナ。早く合いたやその仇ッてネ。
 借金鳥はどっかよそへ飛んでっておくんなッてネ。

 思えばこの世は珍道中 喜の字 

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