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2008年2月24日 (日)

謎出会縁參人目(なぞのであひえにしのさんにんめ)

 生れ故郷のこのお江戸の町ィ、十と三年振りに戻って来たついこないだ、思ひがけねへお二方(ふたかた)にばったり出会の授かり事。その咄ァ先に「大江戸吉縁八百八町(おほゑどえにしのはっぴゃくやちょう)の手控帖に書きやしたが、つゞいて出会ッた三人目、その思ひもしねへ出会に度重なるえにしの年。ことしァ春から妙なめぐり合わせ。縁起ァきっと花開きやしょうヨ。
 浅草は言はずと知れた浅草寺、そのご本尊観音さまト辰巳(たつみ)の角の時の鐘、脇におはする弁天さまに、二度立て続けの不義理をし、後めたさに居心地悪く、でかける用をもっけの幸い、義理立てあやまり参拝に、急ぐこの足、「オヤ、先生トとどめし旦那風の知らぬ顔。「お久し振りですねェ。お出でになるお顔見て、私はすぐに分かりましたよト笑みを見せてのご挨拶。その尊顔を拝せども、覚えのかけらもねへ始末。訊くは一時の恥、「どちらさんでしたでしょうかねェと問へば、「ホレ、大学病院でト指さす方角ァあっしの命二度までも拾ってくれた学問養生所のある、紛うことなき丑寅(うしとら)の方。こいつァまんざら人違いぢァなさそうだト思へどいくら旦那のご尊顔、拝んで見ても思ひ出せねへ体たらく。こいつァほんにあっしの知り合いかい。
「どうです、そこでお茶でもト懐かし顔で水茶屋へ誘ってくれたが、生憎あっしァ観音弁天の別嬪(べっぴん)お二方を待たせての、不義理返しに行かにァならねへ義理ある身。「そこで乗るご公儀乗合(※1)の時刻が迫っておりやすんで、ご無礼ながらこゝで失礼させていたゞきやすト別れの挨拶。「そいつァ残念トきびす(踵)を返すその旦那に「そいぢァあなたさまハあの養生所の病棟であっしの隣の洋床(べっど)にでもおいでゞト問いかけりァ「そうでございますよ能(の)お答。そこまで言はれても、その声その笑みその姿、片鱗いちめへ覚えがねへ。申しわけござんせんが、あっしにァ覚えがありやせんト言ッちァご無礼になりやすんで、あっしもにっこり微笑ンで、「そいぢァまたトお別れといたしやした。
 大江戸八百八町えにしの出会と思えでも、果してほんに知り合いだったのかねえ、あのお方。
 別れてからも謎は謎。あちらさんの勘違い、はたまた新手(あらて)の詐欺の取ッかゝりか。
「いやァ懐かしい。あれから私も命の拾い物。いまぢァ人助けと思って儲け抜きでこの品を、お分けしてゐる善意の身、養生所で袖すり合うも他生の縁、こゝで遇うのは仏の導き、祈祷祈念の長寿のろうそく、一本參萬、けふは特別、えにしの仲、半値の五割引き、七千五百円で特トお譲りいたしやしょうなんてンぢァなかろうかト、思ふこともねへぢァねへが、もしもあの旦那が実正(ほんとう)なら、こんな想像するだに無礼の千万。堪忍してくんねェ、旦那さま。あっしァおめえさんを思ひ出せねへ耄碌(もうろく)ぢゞい。おまえさまがあっしと枕並べて養生したとおっしゃる年より幾星霜、それからけふのこの日まで、何度も医者が匙投げ加減の危篤三昧手術三昧、やっとつないできた命、見かけよりも中身ァとんと惚(ぼ)けておりやす、ト思ッて許しておくんなせえ。
 出会ッた処ァお江戸八百八町のご府外の、その又外の場末も場末、ぶくろ(いけぶくろ)のぞめき(※2)の真ッ只中。妙なご縁のお三方目さんでござんした。

附(つけた)り
(※1)ご公儀乗合。公営乗合自動車。都営バスを洒落た。
(※2)ぞめき(騒き)。わいわいとしゃべりながら歩く、見物して歩く。騒(さわ)ぎ。

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コメント

喜三二賛江

それは新手の詐欺ですね。
私はそう思います。
そいつの人相、悪いでしょう。

私なら、
詐欺師が、大学病院の方向を指差したら、行ったことのない病院の名を出して、話を盛り上げてから、「公儀乗り合い」を理由に帰りますかね。

本当に一緒に闘病した人ならば忘れるはずなどないと思います。

江戸は本当に楽しいようですね。
喜三二賛の話題がいろいろな方向に向かって、これからの(めんどくさいけれども書きます)気三二江戸っ子修業手控帖面白そうですね。
期待しています。

どんどん外出して話の種を仕入れて、皆に教えてください。

奈の字

▼なの字の旦那江

 一緒の部屋で寝起きをともにしても、切羽詰まった病の床ぢァ、人さまのことなンぞかまってらンねえンで、お顔もお名前もまったく覚えていねえッてのが実正(ほんと)ンとこでしてネ。忘れねえのハ頼みの綱のお医者の顔ぐれへのもんヨ。

 旦那、騙し屋の上を行ッちァいけやせん。そいぢァ狐と狸の化かし合い。同じむじなに落ちやすゼ。正直行くと決めたら、騙されると知っても騙されてやるものヨ。
 見世ゑへえって、高直(こうじき。高値)と思っても言い値で買ってやッて、二度と行かなきャよろしいンで。
 マあっしァそんな考への甘だから、金にも銭にも縁が薄くてネ。

 これにこりず、億劫がらずに書き込んでおくんな。これもひとつの善行ト思ってネ。

 喜の字 

 人の縁を喜んでばかりは居られやせんが、そんでも知らん顔よりよござんしょう。
 見当違いに人違い、思い違ってすれ違い、手違い間違い段違い、筋違ったんはボタンの掛け違い!色々違いはあるけれど違いの判る男のなんとやら・・・。
 でもね、いっち心配はねェ、をなご衆からの甘い言葉に勘違いなさらないでおくんなさいな。

▼仇吉姐さん江

 切れ味のいゝの投げ込んでおくんなすって、うれしいねェ。文ァこうありてへネ。韻を踏んで縁語でつゞッて上手の手だヨ。隅におけねへ文をお書きだゼ。あっしも駄文で恥ィかゝねえよふに用心、用心ト。
 吉原をちょいと研究しすぎちゃいやしてト高座で言ってた志ん生も、恋は恋でも金持って来いの恋だからッて言っておりやすもんねェ。
 姐さんのご忠告、身にしみやすヨ。ついふらふらと、色香に弱いからねェ、あっしァ。
 もしかして、どっかで見てンぢャねへのかい。

 喜の字 

heart01ここはほんのり色香も漂い、自称〈じじィ〉もお江戸の若衆のまんま、気風のいい会話、...読ませますねェ。

▼ミーシャ賛江

 ありがた山(やま)だヨ。
 声援にちび多(た)筆にも法(のり)の色ッてネ。
 せいぜい駄文磨きィかけやしょう。

 喜の字

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