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2008年2月13日 (水)

大江戸吉縁八百八町(おほゑどえにしのはっぴゃくやちょう)

 天保暦の師走も押し詰まった比(頃)のことヨ。いつものことで昼を軽く摂りに出たと思ひねえ。四ツ辻ィ渡ろうと一歩踏み出した途端に向ふから渡って来たとッつあんと目が合った。互いにアッと一声。そのまンま足ィ止まッちまッて、立ち往生ヨ。コウ、おめえハと声かけられて、オヤ懐かしい。
  このご仁とは妙な因縁。あっしが広目屋に奉公してた時分にときおり一緒に仕事した仲、我の強い野郎の多いあの稼業の中で欲のねゑお方だからのし上がろうなんて卑しい根性もッちァいず、心持ちよく組んで仕事のできる人でやして、歳はあちらがだいぶ兄(あに)さんだったが親しくさせてもらッておりやした。
  あっしァ四十代の半ばすぎに奉公人の足ィ洗い、一本立ちになってじきに江戸から八つのお山ゑ都落ち。それも束の間、大病の長患い。ようやく娑婆に戻ってまだ足元もおぼつかねゑときに、所帯を持った息子ンとこ訪ねてお江戸上(のぼ)り、ぶくろ(池袋)の駅の雑踏の中でばったりこのご仁に出会ッたことがありやした。向ふさんは階段から降りて来るところ、あっしァその前を突っ切るところ、一秒二秒早くても遅くても出会いハしねえ。それがまた、たま\/辻でひよっこり向ひ合せの出会い顔。縁(えにし)と言ふもんは不思議なもんヨ。
  大晦(おほつごもり)のいちンちめえ、浅草は弁天山ゑ抜ける辻に頃日(ちかごろ)できた揉み屋(※1)で療治を受け、柔らかくなった躰をもう一休みさせよふと、並木町(※2)ゑ足ィ延ばし藪(※3)ゑ上がり込み、ぬる燗一本蕎麦の実の練味噌で盃傾けておりやすト脇ィ立って勘定払う姐さんがゐる。なにげなく見上げたこっちの目と振り向いたそのお方の目がぱちッと合って、ともに見直す顔と顔。アラ、おまいさんはト思わず絶句。なんとあっしが二十年の余も世話になってきた編集のお方。こいつァびっくりいたしやした。こんなとこでお会いするなんてネ。ほんに世間は広いやふで狭いもの。こんなに人がどっさりゐ、八百八町とたとえられるほど広いこの大江戸、よくぞばったりお会いできたもの。これも縁のなせる技。縁の糸と言ひやすが、人と人とは見えねへ糸で結ばれてゐるンでやすねェ。
  出会うも切れるも縁の糸。つながる人とは何年あいだが空いても出会えやしょうし、縁の切れた人とは二度と出会えねへ。そうしたもんでございやしょう。
  久々にお江戸暮らしにけえった今年、三人目はどなたト縁の糸で手繰られるか。そいつが楽しみ、待ち遠しいねえ。

附(つけた)り
(※1)揉み屋。揉み療治を専門にする店。もみ処らく屋、浅草総本店東京都台東区浅草1-32-11  http://www.momidokoro-rakuya.com/index.html
(※2)並木町。現雷門二丁目。江戸時代、日除け地として雷門前に広小路が作られ、門向に茶屋が軒を並べ茶屋町となり、門へ正面から向かう道筋には松並木があったため、両側を並木町と称した。
(※3)藪。並木藪蕎麦。台東区雷門2-11-9

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コメント

喜三二さんへ

東京の生活を楽しんでいるようですね。
読んでいてこちらまで楽しくなります。

広い東京で一瞬の時の出会いは偶然ではないような気がします。
赤い糸があるんでしょうかね?

奈の字

▼なの字の旦那江

 東京ッておっしゃンねへでおくんな。あっしにとっちァこゝはいつまでたってもお江戸ヨ。
 上方の商人(あきんど)の金々(きんきん)好みから百年の余もかけてやっと抜け出し、貧乏町人と貧乏旗本御家人がせっかく造り上げた欲なし文化を薩長の田舎もんにぶっ壊されて、東京(とうけい)なんてべらぼうな名に代えられちまってサ。情けねへ。
 その様変わりの町ン中ほッつき歩いて、かすかな江戸の残り香漁っているッて未練サ。

 喜の字

 観音様のお導き。と、思わずにゃあいられやせん。心の応援団がふえたんぢゃござんせんかい。
 あたしなんざァすれ違うばかり願掛けたって逢えやしやせん。信心深さの違いでしょうか、浮気性がいけないンでしょうかねえ・・。

▼仇吉姐さん江

 ほの字のお人とすれ違いですかい。そいつァお可哀相。きっとモ少し信心なさりァご利益がごぜえやすヨ。観音さまァ心やさしい仏ですゼ。
 それともなにかねェ。水性とのこと。もしもほの字のお方がたくさんあッたンぢァ、観音さまも力の入れどこに迷ッておいでなのかもしれやせんゼ。

 観音さまと弁天さま贔屓 喜の字  
 

恋いこがれても、和えねえのは?名瀬ですかねえ~。
八の里でも、ありやすよ。
奇妙奇天烈な手愛が。不可思議衆が集う山裾になっております。
手謂うか、そんな地所(ポイント)でご坐雲すか。
秘力爆発譽歓でやす。出逢、歓迎、蛇~ たかの児

▼たかの児さん江

 恋い焦がれ、遇うも別れも、時の運。
 珍妙奇妙な恋神さまの、手練手管のいたずら心。
 八つの裾野の恋遊び。
 咲いた花なら散るのは覚悟。散ってばらばら、落ち葉の秋に、探し求めて次の恋、目ッけに飛び乗る空ッ風。
 あしたの春の恋探し。あすは向うか、向いの村か。
 白いは梅か、ソルダムか。黄色に咲いたは菜の花よ。桃色桜に桃の花。
 みんな散れ散れ恋の花。

 たかさんの名文珍句に惑わされて、自分で訳わかんねえ紛い物の詩を書いちまったゼ。
 頃日(ちかごろ)八つの山裾を友感嘆(ゆうほう)が飛んでるそうでやすねェ。あっしも見てえ。

 喜の字

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