無料ブログはココログ

« 観音弁天御礼返大星(くわんおんべんてんおんれいかえしのおおぼしあられ) | トップページ | 尾張霰雨交(をはりあられのあめまじり[※1]) »

2008年1月25日 (金)

閑話休題咄元種(ひまつぶしらくごのねたもと)

 頃日(ちかごろ)ァ聞くこともあまりねへよふだが、たいらばやしかひらりんかッて訪ね歩く馬廉(ばか)ッぱなしの落語がありやしょう。あっしァ根が莫迦(ばか)だからあゝ言ふ他愛のねへ咄が好きでねェ。町ィ歩いてゝ平林なんて表札めっけるトつい、たいらばやしかひらりんか、いちはちじゅうのもッくもくなんてくちずさんぢまう始末ヨ。
  めえ晩寝しなに江戸の笑話集(※1)なんぞをめくるのが癖でネ。寝しなに暇だといやなことなぞ思い出したり、宛もありもしねへ先のことなど思案して気が滅入るといけねへンで、あっしァ寝しなになんか難しいことなんぞ天窓(あたま。頭)が勝手に考えたりしねへよふに、気のおけね屁みてえな本を読むことにしておりやすのサ。
  先の夜もその伝で、きのふはけふの物語の下巻をめくっておりやしたら、こんなんのに出くわしやしたンでサ。ちょいと書き抜いてみやしたんで、寝しなに憂さ晴らしに読んでおくんな。

  上京に、平林といふ人あり。此人の所へ、ゐ中(※2)より文をことづかる。此者(もの)ひらばやしと云名(な)をわすれて、人によませければ、「たいらりん」とよむ。「そのやふな成(なる)名ではない」とて、又余(よ)の人に見せければ、「これはひらりん殿」とよみける。「是でもなひ」とて、またさる者(もの)に見(み)すれば、「一八十木木(ぼく\/」とよむ。「此うちは外れじ」とて、後にはこの文(ふみ)を笹(さゝ)の葉に結び付て、かつ鼓(こ[※3])を腰(こし)につけて、「たひらりんかひらりんか、一八十にぼく\/、ひやうりや\/」と囃(はや)し事をして、やがて尋ねあふた。

  めでたし、めでたし。こんなねた(※3)を元に肉付けして落語を仕立てゝいくンですなァ。
  そういやァ頃日(ちかごろ)、寄席へ行ってねえ。躰ン中から笑いが抜けちまってるやふだゼ。いけねへ、いけねへ。こんなことぢァ苦虫面になって癌なんぞ引き受けちまうかれしれねへ。腹ァよじれるほど笑って、癌の虫、追い出さなきャいけやせんねェ。

附(つけた)り
(※1)江戸の笑話集。岩波書店・日本古典文學体系「江戸笑話集」
(※2)ゐ中。いなか。田舎、の意。憚って字を変えたもの。
(※3)かつ鼓(こ)。腰鼓に似た楽器。撥でこれを打って、獅子舞などをした。
(※4)ねた。種の倒語。倒語は幕末の通人の間で流行った語法。詞をひっくり返して言ふ。しだらない→だらしない。

« 観音弁天御礼返大星(くわんおんべんてんおんれいかえしのおおぼしあられ) | トップページ | 尾張霰雨交(をはりあられのあめまじり[※1]) »

コメント

たいらばやしか、こうりんか。

雪にまみれた、八つの麓も、はやみっともねえ面を

さらしておりやんす。しかしの鹿之助、瓦斯熱湯製

造器が凍っておりやした。んで、急速濡れ髪乾燥機

にて暖め暖めして洗顔をしたりんちゃんでした。

筆のお遊び、ますます力入りで嬉しゅうおます。

あさこと開きではじまったこの年。どうなります事か

せいいっぺい楽しんで、笑ってすごすことに決定。

ひとまず、しゃべりっぱなしでご免候也 たかの字

▼たかさんの旦那江

 たいらばやしか、こうりんかッて出だしァ名調子でございやすねェ。熱湯製造機が凍ったて役立たずになったなんてェこたァ、やっぱり八つのお山のご威光たゞならぬものがごぜえやすねェ。
 こないだお江戸も雪が降る\/なんて前宣伝ばっかし派手に騒いでおりやしたが、振ったんはほんの真似事。八つのお山で永の歳月暮らしたこちとらにしてみりァ真夏の汗知らずの天花粉を真冬に地べたへめえたよふなもん。咄のねたもになりやせん。
 江戸素見会の面々、打ちそろいてお江戸荒らしに繰り出そうッて算段していなさるト青麗亭の年賀状にありやしたが、いつ比(頃)おいでかお決まりになりやしたかい。
目星が立ったら、あっしにもちょいと早めにおせえておくんなせえナ。楽しみにしておりやすンでネ。

楽しみにみじけえ首もキリン様 喜の字

喜三二さんへ

附りで本の紹介をしてあるので、同じ本が入手できそうでありがたいです。

奈の字

▼なの字さん江
 ぜひお読みになってごらんなせえ。江戸の人たちァなにをおもしれえト思ッたかが見えてきやすヨ。
 ただ、一口に江戸じでへト言ってもえらくなごうござんすから、時代によって笑いも変わっておりやすし、文の技も異なっておりやす。そこンとこを読み込むのも、面白みの一つでやしょう。

 喜の字

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/127972/10057875

この記事へのトラックバック一覧です: 閑話休題咄元種(ひまつぶしらくごのねたもと):

« 観音弁天御礼返大星(くわんおんべんてんおんれいかえしのおおぼしあられ) | トップページ | 尾張霰雨交(をはりあられのあめまじり[※1]) »

最近のトラックバック

2017年1月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31