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2008年1月 4日 (金)

正月浅草観音黒海波( はつはるせんそうじひとのおおなみ)

 新暦霜月末の家移(やうつり)も上々大吉で無事に江戸へ戻ってこれたのも、まわりのお人たちのお力添えに加えて、浅草寺観音さまのお蔭と、初詣にこの三日に繰り出しンだが、雷門の前で立ち往生ヨ。人の波がつかえて前へ進まねえ。あっしァお世話になったのハ観音さまだけぢァねえ。境内の辰巳の隅に鎮座まします弁天さまにも大のお世話に也の介サ。鳥渡(ちょいと)順が悪いが先に弁天さまにご挨拶と脇ィまわり、百文贋銀貨(100円硬貨)賽銭箱へチンコロリと投げ入れてドたまァ下げて御礼申し上げ候ト済ませ、さて脇から観音本堂へと目指したが、お寺も莫迦ぢァねへネ。脇からこすく入れねえやふに柵で仕切っておいでヨ。
  仕方ァねえから水茶屋でちっと時ィつぶしァ昼下がりの陽射も傾いて、そうすりァ風が冷たくなって人もけえるだろうと踏みやして、昆布茶にくず餅、銀烟管でいっぷくト間を持たせたんだが、どっから繰り出してきたお人たちだがしらねえが、よっぽと暇と見えてまったく人波が減りァしねえ。
  そいぢァこの間に昼の仕度にかゝるかッてんで、雷門を跡(後)にするが、お目当ての藪(並木)ハ三ケ日休業と仕りニ候の貼紙。こうなりァ時間潰しのついでト駒形の四ツ辻を渡り、駒形どぜう六代目越後屋助七まで足ィのばしちまいやしたゼ。てめえで言ふのもなんだが、あっしの足もけっこう歩けるふやになったもんト感心すらァ。前ァ駒形橋の脇、鰻屋の前川まで歩くのもつらかったものだが、お江戸へ戻ってからッてもンからまいンちなんだかんだと歩いてゐるからずん\/歩けるやふになって来て、この分ぢァ半年もすりァそこら走りまわれるかもしれねかへし、一年もすりァ空ァ飛んでるかもしれねへくれえ元気になったゼ、なんてネ。
 込んでるのハ浅草寺だけぢァねへ。この泥鰌屋も大賑わいヨ。見世のめえに縁台をいくつも並べ、ところどころに唐金の火鉢ィ置いて、炭をかん\/におこして添えてある。こうした心遣いがうれしいぢァありやせんかい。一人客だから相席させてもらって早く見世へゝえれるかと目論んだが、そうは問屋が卸さねへ。四半時の余も待ったかね、けえっちまおうかと思ひだした比(頃)やっと名ァ呼んでもらって中へゝえる。下足番に雪駄と銀の洋杖(すてっき)を渡し、下足札ァもらって入込みへ上がる。床にァ竹の薄縁ッて言ふのかね、そいつを一面に敷いてあって、その上に膳代わりに檜の長い大板を置きてある。ちっせえ座布団に胡座をかき、誂えたンは柳川にご飯。このご飯がうれしいねェ。小なりと雖(いえども)お櫃(ひつ)にへえって炊きたての熱々、蒸れてもねへ。真ッちろの銀シャリを茶碗に一膳よそって、跡(後)は蓋ァ開けておきァ自然と湿気が抜けて米ッ粒に弾むやふな歯応えが出てきて、こいつガうめえのなんのッて、跡惹(ひ)くご飯だゼ。
  柳川にァ山椒の粉ァ振って、これも熱々を小皿にとりふう\/吹いて食べる。山椒の香りが軽やかでゞえ好きだゼ。柳川ァあっしの好物。言ふまでもねえが、泥鰌の開きを笹掻きごぼふトいっしょに玉子で綴じてありやして、こいつガうめえ。丸のまンまの泥鰌汁ハ喰わず嫌いで、意気地がねえがあっしァ駄目なんだ。もしも奇特なご仁がゐて馳走でもしてやらふト思し召したら、柳川の方で御願い奉りたいと思っておりやすんでネ。
  さて、柳川であっためた躰でもいっぺん雷門へ戻るとちったァ人波が減ってゐる。これならなんとかなるかとくゞったが、仲見世二三軒進んだがもういけねへ。跡ァ一寸刻みの五分詰めで、なか\/めえへ進まねえ。人の間に挟まって見上げる空ァだん\/暮れて来やがる。こんなことしてゝも埒ァあかねへ。おいら一抜けたゞ。観音さん、ちけえ内にかならず礼をしに来やすから今日ンとこは勘弁してくんねェと宝蔵門もくゞらねへ遠くから腹ン中で手ェ合わせ、ご無礼トさせていたゞいたッてとこが、けふの顛末ヨ。
 ほんに観音さまのお力は大きいねェ。日本中の人を吸い集めたよふだったゼ。これだもんな、田舎にァ人ハいなくなっちまうのヨ。みんなお江戸へ出て来ちまう。あっしがついこないだまで燻ってた八つのお山なんぞ、いっぺん十人とまとめて見ることなんぞ稀でやしたもんねぇ。参ったネ。

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コメント

賀春 
今日浅草のお寺さんに行きました、浅草公会堂の若者の新春歌舞伎一部の後、午後3時過ぎ。

振り向くと、何じゃこりゃの数の人間が、雷門の向こうからびっしり。  人間がこんなに多いのは初めてかも、アメ横もこれほどいない、でもここまで来て後にも引けず、波に乗って左右分かれた左から、おまいりにやっと階段を上がったものの、さあそこで、押すな押すなの人並みに、もう息も絶え絶え。 

きゃあ、つ、つぶれそうだ~、もういい、手を合わせるどころじゃないはよう外にでましょ。  ちょうど強引に来て左側にそれる人垣に乗って放出され、ええい此処から賽銭投げだ。 おしゃかさん、お許しを、だって体がばらばら寸前ですよ~。

お堂に入ったらお参りしたもおんなじさ、ここでゆるしておくんない、とか何とか心の中でつぶやいて、内臓破裂寸前の、群衆の中をはいずり出てきました。
今日は4日、もう空いているかと思っていたのは甘かった! 人の体は怖いねえ。 江戸は人が多いねえ。

初買いは一年中必須の涼しいお扇子一本。 扇を今年の夏二つとも、馬鹿なことに無くしてしまいましたが浅草は、扇もいろいろあって楽しいなあ。 舞扇もくたびれてきたけど、こちらは師匠に相談してにしよう。

という今日の歳初めのお江戸でしたが、喜三二さんも、今年も健康で楽しい日々を過ごせますよう祈念しておりまする。


追い書き: 浅草歌舞伎の「白波五人男」にまだ酔っています。

▼ミーシャ姐さん江
 明けましておめッとうさんで。
 お行きなされたかい。えらい人出だよねェ。あいだけあすこに集まっちまったち、田舎ァ空っぽだヨ。いやほんにご無事でなによりサ。
 お江戸の人ァ毎年あの人波にもまれて渋皮がむけて垢抜けるのかト思ひやしたゼ。あっしももっともまれねえといけねへ。

 渋皮ぢゞゐ 喜の字

明けましておめでとう御座いヤす。
今年も楽しい文、お願いいたしヤすよ。
                                           ホンにさァ、旦那の文ィ読んでると柳川鍋が浮かんで来るよじゃないですかい。あったまるし、精はつくしで歳ィ一つ置いて来たんじゃないですかい。
あたしもご相伴に預かりたいもンだねえ。 

▼仇吉姐さん江

 明けまして、おめッとうさん。今年もご贔屓のほど、お願いいたしやすゼ。
 また昨年につゞいて切れのいゝお文を頂戴いたしやして、うれしいねェ。
 この、歳ィ一つ置いて来たんじゃないですかい、なんて文ァあっしァ虚を突かれやしたゼ。上手いもんだねェ。姐さん、どっかで文書く稼業しなさっておりやしょう。並ぢァ出ねえ文句ヨ。畏れ入谷。あっしも気が抜けねえネ。用心、ようじん。

 喜の字

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