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2007年7月15日 (日)

いろはにほへとよめもせす その弐

Photo_5  馴染みの古本屋がお江戸をはるかはなれた北九州にありやしてネ、長崎遊学ぢァねへけれど、そっからあっしに不足してる学問を補うこんな書籍がへえりやしたヨとお知らせくださる仕組みになっておりやすのサ。ぶっちゃけた咄、あっしの江戸学問ハそッから仕入れた書物に頼ることがけっこう多ございやしてネ。変なもんだゼ。
 ついこないだモお知らせがあって、品目の中になんと傾城買四十八手(けいせいがいしじゅうはって)がありやすのサ。それも、原装複製を謳っておりやす。今様活字本ぢァねへゼ。復刻ヨ。そのうへ元の装釘だってンだ。こいつァ掘り出しもんヨ。さっそく手配をご依頼いたしやしたよ。
 届いたもん見て、おどろきヨ。写真の通りだヨ。函入りで、中身ァちゃんと昔の筆文字を版木に彫ってある。たッて実正(ほんと)ハ複写しての製版なんだろうけどネ。部数は千五百部しか刷ってゐねへ。あっしの手元に来たのは一三八二番と朱印が押してある。価は、新刊ンときァ参萬八千兩、あっしが払ったンは参千兩。ずいぶんとお安くしていたゞけたッてわけだ。貧乏人ハ得ヨ。なんてッたって、神さんがついておいでだからネ。貧乏神ッて神が。
 さて、開いて見て思はず手ェ震えやしたゼ。なんてッたって、さっき言った通り筆文字なんだから。お江戸ンときのまんまッてことヨ。著ハ山東京伝、奥付繰りァ書林江戸通油町蔦屋重三郎ッて書いてありやすのサ。あの蔦重ヨ。
 恐る\/読みましたゼ。ところがこいつガ読めた代もんぢァねへ。まして取っかゝりハ序だからいっそうヨ。とかくあのころの物書ハ漢文の素養を誇りやすからネ。序文に凝るわけヨ。当て字もひとひねりふたひねりしてゐやがるから、読む方も一筋縄ぢァいかねへヨ。
 そんなとこでけつまづいてちャ旅ハはかどんねへンで、取りあえず拾い読みで飛ばして、いざ本文へへえりやしたト思ってくんねへ。
 初ッぱなが、志津保里と志し多手だ。こいつァ、しっぽりとした手ッて読んでやっておくれ。マ万事こんな具合に変体仮名どっさり混ぜて書いてあるッてことヨ。客はまだ初(うぶ)な息子、相方ハまだ十六のつ(突)き出し(※)の女郎。どっちも初々しいッてことサ。この二人のやりとりが、ほとんど咄だけで書いてある。明治からの、文学なんて舶来の招牌(かんばん。看板)掲げた偉そうなもんとハ大違い、地(ぢ)の文なんて説明する手抜きァしてありやせんのサ。
  なんとかゝんとかたど\/しいンだが、読んでいくうちに、なんだかこの咄ィどっかで読んだぜッて心持ちになりやしたヨ。そいで、本棚探ッたらありやしたのサ、活字本ガ。
  そいつァ版元ァ岩波さんヨ。日本古典文學体系の黄表紙洒落本集。そんなかにちゃんとござったッてわけだ。だが、がっかりするのハまだはえへ。比べて見てあッと思ひやしたゼ。活字本は変体仮名をご丁寧にみんな平仮名にしちまッてゐるのサ。だからそれ読んで、江戸の文体判りやしたなんて思ったら大間違い。変体仮名交じりで書かなけりァ、お江戸の文(ぶん)にならねへッてことをはっきり教えられやしたネ。

附(つけた)り

(※)突出(つきだし)。禿(かむろ)からではなく、素人女からいきなり女郎になった者をこう呼ぶ。遊里言葉。初めて女郎として客を取る女。新子(しんこ)とも呼ぶ。禿とは花魁に突き従う女児で、そこから将来花魁を育て上げる。

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コメント

噛んで含んでおくんなせェ、むつかしいこったァ解らねへからこうやって、明かして下さるのが嬉しいねェ 皆の衆も楽しみにしておいでじゃァないですかい。

▼仇吉姐さん江

 姐さんなら、すら\/読めるンぢァござんせんかい。あっしァまだ\/駆け出しの青だから、つっかえ\/サ。
 そいでも、ほんにこの読みでいゝのかねへ。あっしァ按じるセ。

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