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2006年11月19日 (日)

あっしの江戸ッ子

 江戸しくざッてものがありやす。こいつが身につかねへと江戸ッ子たァ言へねへト聞きやしたが、三代江戸に生まれ育たねへと江戸ッ子ぢァねへッて詞(ことば)ァそっから来たンだと思ひやすネ。そんくらい、江戸しぐさッてもんが、自然と身につなわるにァ歳月がかゝるッてことなんでやしょう。
 デ江戸しぐさトハなんだと言やァ、たいしたことぢァねえ。鳥渡(ちょっと)した気遣い。それも縁も所縁(ゆかり)もねへ赤の他人さまへの気遣いに過ぎねへ。
 たとえばでやすが、雨降りのに傘差してお人とすれ違うとき、そのお方さんの方へ傘の雫ゥ落ちねへように、傘ァはんてえ(反対)側へ倒しやすよネ、そういうことでやすヨ。
 立ち話で人が道ィふさいでおいでのときなんぞ、ちょいと通しておくんなせへト軽く声かけ頭ァ下げて道ィゆずってもらうッてのも、そうした礼儀でやすねェ。
 電車に乗りァたとえ隣の席が空いていても、荷物をそこに置かず膝の上か網棚へ載せる。隣の席に置いたンぢァ、座りたいと思っていらっしゃるお方がゐても座ることができねへ。声かけられたらどけりァいゝなんて思って荷物置いてる野郎ハ気のきかねへ山出しのおほたわけ。そんな野郎女郎ハ孫子の代までおゑど(江戸)ト呼ばれる町ィ出てきちァなんねへのヨ。
 お見世(店)で買物済んで釣銭もらったら、そいつゥ財布仕舞うときにァ脇へよけて、跡(後)のお客さんのために場を開けるのガ他人さまとお見世への遠慮ッてもん。もた\/してやがるのハ世間さまの迷惑なんダ。
 食べ物屋なんぞへゝへえったときに席の取りようで、そいつのお里が知れるッてもんだ。近比(頃)ァカウンターなんぞとげえこくご(外国語)で洒落のつもりか、詞知らずか呼びやすが、マ要は付け台でやすが、その真ン中にでんと何様のつもりか偉そうに腰据える野郎女郎がおりやすが、こういふ輩(やから)ほどみっともねへのハねへネ。跡から見えるだろう他人さまが席ィ取りにくゝなって迷惑ヨ。客が迷惑するッてことハ見世の迷惑。そいつゥ気づかずに通う莫迦野郎のことを贔屓の引き倒しッて言ひやすゼ。

 そんなこんなデあっしの思ふ江戸ッ子てえのヲ煎じ詰めりァ、簡単なことで。はへえ(早い)咄(はなし)がここに、身内と知り合ひと赤の他人さまがゐたとしやしょう。いっち(一番)気ィ遣わなくちャなんねへのが、赤の他人さまへヨ。次が知り合ひ。身内なんぞへの気遣いは最後でいゝのヨ。
 ところが世間にァ心得違いのお方が多いネ。身内にァ孫子の代まで世話になるから、でえじ(大事)しなくちァ、赤の他人なんて関係ねへから踏みにじッたってかまやしねへッて思ってるべらぼうがほとんどダ。エヽそうぢァねへだろう。赤の他人さまトハ一期一会ヨ。跡でお詫び言ふこともできねへ。身内、知り合ひハ言ってみりァてめへの仲間内ヨ。万一不始末があったッていつでも詫びるこたァできらァ。それにでえいち(第一)損得で人さまへと接するなんてこたァ賤しいぢァござんせんかい。
 仲間で酒呑んで辺り構わず大声だしたり、騒いだり。こんなみっともねへ恥さらしァねえゼ。周りにいなさる他人さまにどいだけ迷惑かけているカ。そいつゥ気づかねへような間抜けァ江戸ッ子になるにァ三代も四代も早いッてことだトあっしァ思ひやすヨ。

2006年11月11日 (土)

貧すれば通ず知恵飯なり

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 行きつけの蕎麦屋でハ天麩羅の揚げ玉を無銭(ただ)で客に供しておりやす。
 いまのおゑど(江戸)ぢャそんなこたァありやせんでやしょう。かけ蕎麦の上にその揚げ玉振りかけて客に出しァ狸蕎麦として立派にお足をいたゞける品でござんすヨ。その揚げ玉が、たゞなんだ。豪気なもんぢャねへですかい。かけ誂えて、揚げ玉くんねへッてお運びの姐さんに小鉢に盛ってこさせ、そいつゥ目の前でかけて狸にしても、お代はかけのまんまヨ。
 その上、この見世(店)の大将の気っ風のよさッたらねへよ。揚げ玉を袋に入れてご自由にお持ち帰りヲッて台の上に置いてあるッて心意気ヨ。

 あっしが巣ゥくっていた時分、もう三(み)昔も前のことになりやすが、いまのお江戸(東京[とうけい])で、この揚げ玉を玉子でとじた狸丼ッてのを出した見世がありやしたヨ。マ言ってみりァ、玉丼に揚げ玉がかゝっているッて案配ダ。江戸ぢァ天麩羅と言やァ胡麻油で揚げるものト相場が決まっているから、香りが芳ばしい。食がすすむッてもんだ。

 サテ苦しい身(貧乏のこと)なんで、飯のたんび惣菜の算段に苦労するのハいつものことだが、その揚げ玉ご奉仕の蕎麦屋できのふ(昨日)の午(ひる。昼)、蕎麦ァ手繰っていてはたト膝を打ったヨ。このたゞ揚げ玉をもらってけえり、飯を工面すべえとネ。

 そいでけふ(今日)の昼は、乾麺を茹で生卵を落して月見にし、その上ェ揚げ玉どっさり散らして月に叢雲(むらくも)狸の月見と洒落やした。
 夜も狸ヨ。出汁に濃いめの味をつけ、そいつへ玉葱刻んで落し、しんなりするまで煮、溶き卵を流し込み、また\/揚げ玉山と積み、丼に盛った飯にかけて、狸丼の一丁上がりダ。

 東京ハ山手線の目白駅近くに小体な鮨屋がありやす。先代の小さんがよく来ていたようで、色紙がなんめへ(何枚)も懸かっている。それが師匠、なんとかの一つ覚えで、ぜんぶ狸のゑ(絵)なんだ。筆が立つせいか、師匠がお書きになられる狸がどれもこれもみんな年増に見える。そいつが髷結って、抜衣紋で歩いていなさる。そんで、横に他抜きなんぞ書いて洒落ているぢァねへかい。やるもんだネ。

 あっしァ、な(引[※])ると合点がいったネ。
 たぬきッとハそのことか。他人抜きで、いとしいお方と水入らずッてネ。デモ師匠、モひとつありやしょう。他人を牛蒡(ごぼう)抜きで出世するッてのもたぬきぢャござんせんかい、トね。
 ト言ってやりたがったが、こいつァ江戸ッ子としちァ野暮な根性だネ。引っ込めやすヨ。聞かなかったことにしてくんへねナ。

 そんなこんなで、けふは縞の財布の底をはたかなくて済やしたッてわけダ。ありがてへことヨ。貧乏すると知恵が湧くゼ。マ今宵は知恵の飯ッてことで、サテお跡(後)がよろしいようで。

 写真ガ立役者の狸丼。ワキの向う付け鉢も菊の花型。惣菜は里芋の親戚の八幡芋。そいつへやげん堀の七色を振りかけやした。

 瓠(ひさご)徳利ハ京焼、銀彩で見返りの鹿ト雉(きじ)が躍ったおりやす。染め付け捩手柄の盃も京焼。この二ツにァ物語がありやすが、それハまたいつの日にか。
  
[※]引。江戸時代は現代の長音表記「ー」がなく、音を引っ張る表記は「引」の字を小さく書いて表した。

2006年11月 9日 (木)

みぞれ鍋、〆ハなめこ丼

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 サテ今宵はなんの飯にすべえかと悩んだときァ、困ったときの鍋頼み。鍋にすりァたいがいなんとかかっこ(格好)がつかァ。
 とりわけ冷え込んだ夜ハ、いっち(一番)いゝのが、霙(みぞれ)鍋ヨ。
 だへこ(大根)を鍋にたっぷりおろし、出汁昆布をちょいと底に敷き、水を少し張って比(頃)合いのゆるさにして、そこへ絹ごし(豆腐)を奴に切って沈めやす。
 小鉢にァポン酢、お好みぢァ、土佐醤油でもよござんすなんて、なんだか料理指南みてえに偉そうになッちまって、ご勘弁願いやすヨ。なんてッたッて、霙ァあっしの大の好物なんでネ。つい力ァへえってしまいやして。面目ねへネ。
 料ずるッたッてたったこれだけのことなンだが、こいつが滅法界うめへのヨ。そのうえ、上戸に都合がいゝは、酒ェ食べながら(※)でも、豆腐に鬆(す)がへえらねへことだネ。豆腐は鬆入ると不味い。湯豆腐は、湯の中で豆腐がぐらりと身を傾けたくれへが、喰い比ヨ。
 そりァ分かっているが、いっぺえ食べてるときァ、つい見逃して豆腐を鍋の中で躍らせチまう。盃、唇に当てながら、目ハ鍋ン中のから一時も離せねへぢャせわしなくていけねへ。霙にしておきァ、そんなせっかちのしんぺえはねへ。どっかり腰ィ据えて酒ェやれるッて寸法ダ。
 しかしこいつァあったまる。汗ェにじんでくるゼ。まだやったことのないお方は、ぜひおすすめだヨ。

 そいで仕上げは、滑子(なめこ)の丼。昆布と鰹節の出汁に溜り醤油と味醂、酒で味ィつくり、そこへ滑子を入れて一煮立ち。仕上げに賽の目に切った絹ごしを落し、吉野葛を溶きァ出来の上がりダ。
 その熱々を飯にぶっかけて喰やァ、けふの仕合わせッてもんだゼ。香りづけに山椒の粉(こ)を振るのがよござんしョなんて、洒落たりしてネ。
 マよろしかったら、やってみておくんなせへ。
 こんな料理ァ、てめへにおそわンなくたッて疾(と)うに知ッてラ、このおたんこなすッておっしゃる向きにァ、平にご容赦だヨ。教え癖があっしのわりいとこヨ、勘弁してくんねへ。

木枯らし一号の吹く宵は

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 都落しやしたあっしァ、八つのお山くんだりに隠れ住んでおりやすが、七日は酷い風が吹きやしたヨ。ぼろ屋がきしむような大風で、その寒いの寒くねへのッたらねへネ。まるで真冬ヨ。そんで表へ出て見て驚いたヨ。甲斐駒ヶ岳ハ中腹より下まで真ッちろ(白)ヨ。八つのお山だって薄白髪だゼ。
 ぶる\/ッて震えたら、こないだの三日の土曜の夜、フジのテレビ屋さんが藤枝梅庵を放送しやしたが、そん中に出てきた湯気ェ上げてる風呂吹きでえこ(大根)が目の前ちらつきやがッて唾ィ湧いてしょうがねへわサ。
 デさっそくこさえやしたヨ。あっちァ黒胡麻のたれでやしたが、あっしァなんてたって品がおよろしいから、金胡麻でお上品につくりやして、それでいっぺえ(一杯)きこし召したッてわけサ。
 語るだけぢァ申し訳ねヘンで、ちょいと添えておきやしたンで、画(ゑ)ェ肴に眺めていっぺえ自前でやってくんねへ。

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